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3Dプリントで製造業がダメージ? 各国で生産性向上に貢献

3Dプリントで製造業がダメージ? 各国で生産性向上に貢献

Posted March. 29, 2017 08:34,   

Updated March. 29, 2017 08:35

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ピンク色の漂う紫溶液の入っている試験室用皿の上に、注射針が頻繁に左右に行き来した。その軌跡に沿って長方形状に少しずつ層が積もっていた。20数分が経つと、やや透明な材質のものが、コインサイズに姿を現わした。人工皮膚だった。溶液は細胞培養液であり、注射針を通して真皮細胞とコラーゲン、表皮細胞などを3次元(3D)プリンターを利用して、順番に積み上げたのだ。このように作られた人工細胞は、化粧品会社で動物実験の代わりに使われたり、火傷患者の治療などに使うことができる。

23日午後、ソウル衿川区(クムチョング)に位置しているバイオ3Dプリンタの製造会社「ロキット」を訪問した時に目にした場面だ。その前日は、豪州からバイオ3Dプリンタを開発する有名研究者が訪問し、同日午前は、シリアの医療関係者が訪れたという。昨年約50億ウォンの売り上げを上げた同社は、今年の売上高を2倍に増やして100億ウォンにしている。

3Dプリンタが産業のいたるところに食い込んでいる。趣味用や試作用に主に使われていた3Dプリンタが、世界各地で産業の生産性を高める役割を果たしている。

●製品中心の考え方を破って生産性向上に活用すべき

未来創造科学部(未来部)によると、世界の3Dプリンティング産業の規模は、2015年の51億ドル(約5兆6738億ウォン)から2019年は158億ドルへと年平均31%ずつ高成長するものと見られる。同期間、国内市場規模は、2230億ウォンから5082億ウォンへと膨らむものと予想される。年平均の成長率では22.9%で、世界平均よりも小さい。

成長率の差は、3Dプリンティングを活用する主な分野が異なるからだ。先進諸国では早くから、完成品ではなく、製造過程に必要な「ツール」を製作するために3Dプリンティングを利用している。

BMWが代表的だ。自動車エンブレムを取り付ける時、「ジグ(Jig)」と呼ばれるツールを労働者らが手にして使っているが、通常は金属でできているので重くてなかなか手になじまない。そのため、3Dプリンタを利用して軽い材質で手にぴったり合う形のツールを製作して使用すると、仕事の能率も上がり、肩の痛みなどを訴える労働者も減少した。

部品が曲線型なので床に置いて作業するのが難しい時、この部品を固定させるツールを3Dプリンタで作って能率を上げた工場もある。大量生産では製作が難しいが、絶対必要なツールを直接作って使ったのだ。

3Dプリンタは、在庫管理にも使うことができる。古い製品のサービスのため、メーカーではあまり使うことのない部品も長い間持っている必要があるが、当然保管費用がかかる。3Dプリンターがあれば、部品設計図だけ保存しておけば十分といえる。部品が必要になれば、そのつど部品を作って使えば済むからだ。

このような用途なら、スタートアップや情報技術(IT)企業より、むしろ伝統的メーカーのほうで3Dプリンタを活用できるところがより多い。世界の各メーカーが我先に3Dプリンタを導入する理由でもある。航空機エンジンを生産する米ゼネラル・エレクトリック(GE)は昨年、航空分野の競争力を強化するため、金属基盤3Dプリンタの製造企業であるスウェーデンの「アーカムAB」社とドイツの「コンセプトレーザー」社を総額1兆5400億ウォンで買収した。今月初め、米フォードは世界トップの3Dプリンタメーカーである米ストラタシスと手を組んで、自動車部品の生産実験を進めていると明らかにした。専門家らは、今後3Dプリンタ市場は趣味補給用ではなく、産業用を中心に成長するだろうと見ている。

●バイオ・新素材など新分野の開拓が必要

未来部の統計によると、韓国では3Dプリンタを主に教育と試作品製作に使っている。3Dプリンタの製造会社も、零細なところがほとんどであり、技術水準も米国の66%ほどと評価される。未来部の関係者は、「製造業での需要が足りない上、外国製3Dプリンタへの依存度が高いのが現状だ」と話した。

3Dプリンティングは機械、航空宇宙、自動車などに主に使われるが、幸いなことに、近い将来に最も成長が速いと予想される分野は、韓国も強みを持っている医療・バイオ分野だ。ロキットを起業したユ・ソクファン代表は、セルトリオンの系列会社であるセルトリオンヘルスケア社長出身だ。専門性を活用したことが、価格競争力を備えるのに大きく役立った。ユ代表は「ドイツなどの外国バイオ3Dプリンタは、機械の専門家らが作るので、薄くて細かく作ることにのみ重点を置いて価格が高い。バイオ3Dプリンタは、細胞を生かせるのが重要だが、やたら細かいからといって細胞が生存するわけでもない。我々は、細胞の生存に重点を置いて、価格を大幅に下げることができた」と説明した。

プラスチック中心の3Dプリンタ素材の欠点を克服するために、炭素繊維や金属などの新素材を活用する方策を探すのが、3Dプリンタ業界の話題となっている。国内大手企業各社もこれに注目し始めている。SKケミカルは16日(現地時間)、米ニューヨークで開かれた「インサイド3Dプリンティングカンファレンス&エキスポ」に参加し、既存の3Dプリンタ素材の問題点を解決した「スカイフリート」を発表して、米州市場攻略に乗り出した。15日、現代(ヒョンデ)ウィアは、金属を削って加工する工作機械に、3Dプリンタの機能を結合させた製品の第1段階開発を完了したと発表した。現代ウィアは今年末までに2段階開発を終え、2020年に世界市場に進出する計画だ。



金成圭 sunggyu@donga.com