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対北朝鮮サイバー戦、パラダイムを変えろ

対北朝鮮サイバー戦、パラダイムを変えろ

Posted January. 13, 2017 09:09,   

Updated January. 13, 2017 09:10

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昨年、米国で上映されたドキュメンタリー映画『ゼロ・デイズ』は、2010年のイラン核施設に対するサイバー攻撃の全貌を扱っている。イランのナタンズ原子力発電所の内部制御網を破壊したコンピューター・ウイルス「スタックスネット」の実体とその背後の追跡が主なストーリーだ。

映画は、世界有数のサイバーセキュリティ専門家と元情報機関長、匿名の情報提供者らをインタビューし、米国とイスラエルが主犯だと目星をつける。米国家安全保障局(NSA)とサイバー司令部、イスラエルのモサドがイラン核開発を阻止するために極秘裏にスタックスネットを開発したということだ。「オリンピック・ゲーム」と命名されたこの秘密作戦の緻密さは想像を絶する。NSAなどは、イランが公開した政府高官のナタンズ原子力発電所訪問写真を分析し、ウラン濃縮用遠心分離機の稼動規模と配備形態、機種と製作業者まで把握した。

その後、遠心分離機の回転モーターに過負荷命令を下して壊すサイバー兵器を開発し、ひそかにナタンズ原子力発電所の管制システムに侵入させた。この攻撃で、ナタンズ核施設は大きな被害を受けたが、イランがスタックスネットの存在を把握したのはしばらく経ってからだ。さらにNSAはイランの金融と通信、交通網だけでなく、軍指揮網まで一挙に無力化するサイバー全面戦争を計画したと映画は紹介する。スタックスネット攻撃は、それに比べれば、「裏路地(back alley)作戦」にすぎないということだ。

実際に数個のコンピューター・ウイルスが、核兵器以上のダメージを与えることができる。主要インフラであるコンピュータ管制網がサイバー攻撃を受ければ、国家機能は「オールストップ」する。人間なら中枢神経系が麻痺して「脳死状態」になるようなものだ。大惨事や株価・為替暴落、バンクラン(銀行の取り付け騒ぎ)、電力と上水道の大乱など国家的危機事態が同時に起これば政府は打つ手がない。

相手国の政治体制や権力構図を自国の思いどおりに操作することも可能だ。最近、ロシア情報機関の米大統領選ハッキング事件でその可能性が如実に立証された。仮想(サイバー)世界が現実世界を左右し、支配する日も間近という黙示録のようだ。

サイバー脅威は、韓国の安全保障にも「足下の火」だ。北朝鮮の韓国へのサイバー攻撃は日増しに頻繁になり、その手法も進化している。最近、米国防総省は、北朝鮮がサイバー攻撃で米太平洋司令部指揮統制所と本土の電力網をマヒさせることができると指摘した。実際、放送局や金融機関のコンピュータ・ネットワークがハッキングされ、昨年には韓国軍の内部専用サイバー網(イントラネット)まで侵入され、有事の際の作戦計画関連資料まで流出した。外部網(インターネット網)と軍内部網は分離しているためハッキングの危険度が低いと油断した韓国軍は、完全に不意をつかれた。国防部はあたふたと対策づくりに乗り出したが「死後の処方箋」という批判は免れない。このような軍を国民は不安な目で見ている。

事態がこのような有り様に至ったのには、軍の責任が大きい。北朝鮮が核とミサイルに続きサイバー兵器の開発に全力投球する間、韓国軍は通常戦中心の戦力増強を踏襲した。その結果、北朝鮮の3、4倍を上回る国防費を使っても、戦力格差の脅威に戦々恐々とする「安保敗着」をもたらしたという指摘を軍首脳部は肝に銘じなければならない。

今からでも北朝鮮に対する軍事戦略と戦力増強の新しいパラダイムを模索しなければならない。先端情報通信技術を組み合わせた「韓国版スタックスネット」のようなサイバー兵器の開発に目を開かなければならないということだ。まだ初歩レベルである韓国軍のサイバー戦力の大々的なグレードアップから急がなければならない。サイバー劣勢をこのまま放置することは軍の職務怠慢だ。