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[社説]怒れる米国の選択、トランプ政権の対外政策に備えなければ

[社説]怒れる米国の選択、トランプ政権の対外政策に備えなければ

Posted November. 10, 2016 07:06,   

Updated November. 10, 2016 07:32

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米共和党のドナルド・トランプ氏が所得減少と雇用の危機に不満を抱く米国民の支持を受けて第45代米国大統領に当選した。出馬宣言から11ヵ月でリンカーン大統領を生んだ160年の伝統の共和党候補になり、ついに大統領にまでなる大異変だ。共和党は上下院選挙でも大勝を収めた。

当初、米国の世論と世論調査機関は90%までヒラリー・クリントン氏の勝利を予想したが、公職経験が全くないアウトサイダーがホワイトハウスに入城すると、言葉を失った様子だ。最初から今回の選挙は民主・共和両党の対決構図と見るよりも、クリントン氏に代弁される既得権・既成政治勢力とトランプ氏、サンダース氏(民主党)に代弁される非既成政治、アウトサイダーの対決だった。政界と主流メディアが民心の変化を読めずに虚を突かれたという点で韓国にも示唆するところが大きい。

8年前にオバマ大統領が掲げたスローガンが「チェンジ」だったなら、今回の選挙キーワードは「怒り」だ。「一生懸命仕事をすれば成功できる」というアメリカン・ドリームは壊れ、中産層は崩壊した。数十年間続いた新自由主義政策は、ウォール街の貪欲を放置する者、持つ者のためだけの「自由」政策になったという思いが米中産層に広まった。メキシコとの国境に壁をつくるという公約をはじめ、外国人と移民に対する嫌悪を前面に出したトランプ氏が勝利したのは、中産層の夢が崩れた白人低所得労働者の心に食い込んだからだ。

トランプ氏は対外政策の核心アジェンダでは、保護貿易主義で武装した「米国第一主義(America First)」と新孤立主義を掲げた。トランプ氏の対外政策はひとことで言って「金を出せ(Pay Us)」だ。中東のサウジアラビアも地上軍を送ったり金を出したりしなければ原油輸入を禁止すると言った。中国に対しては、「米国の知識と雇用を盗み出す強姦国」と言い、「敵対勢力(Adversary)」と見なした。米中対立が高まり、北東アジアが荒波にのまれて韓半島が主戦線になる可能性が高い。国がすべて「崔順実(チェ・スンシル)波紋」に包まれ、国政がマヒ状態に陥っているところに米国発の台風まで押し寄せている。

トランプ氏は韓国に対して、米国が提供する安全保障を享受して経済発展を謳歌した「無賃乗車(Free Riding)国だと非難し、在韓米軍駐留経費の負担金引き上げと核武装カードまで出している。直ちに在韓米軍駐留経費を今よりもさらに毎年9000億~1兆ウォンを支出する可能性が高まった。トランプ氏は、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長に対しては「狂人(Maniac)」と言いながらも「対話できる」として対話の可能性を開いた。金委員長も米国と対話して核に対する暗黙の同意と将来的に核を担保に北朝鮮制裁の緩和とサラミ型補償など自国に有利な交渉局面を作ろうとする可能性がある。韓国と日本の核武装を妨げないというトランプ氏の発言が果たして具体的な政策として実現されるのか世界が注目している。  

国際貿易だけでなく移民、外交、安全保障にいたる不確実性が増大し、直ちに国内市場は韓国総合株価指数 (KOSPI)の2000ラインが崩れ、日本、中国、オーストラリアなどアジア証券市場も暴落した。選挙日の後に開場するニューヨーク証券市場の動向によって、ややもすると「ブラック・ウェンズデー」になることが懸念されている。トランプ氏が攻撃してきたメキシコは通貨ペソが暴落し、世界市場の資金は金と日本円に集まっている。

トランプ氏が主張した保護貿易主義が強化され、各国家が生き残りに出る場合、世界は為替戦争、保護貿易戦争に包まれる可能性が高い。トランプ氏はすでに韓米自由貿易協定(FTA)が米国経済を阻害した「壊れた約束」の代表例だとし、再協議を主張した。韓国経済研究院は、韓米FTAの再協議で譲許停止となる場合、2017年から5年間で輸出減少269億ドル、雇用損失24万に達すると推定した。

だからといって悲観する必要はない。選挙運動期間のトランプ氏の発言は国内の支持層を狙った政治的発言の性格が強い。政策検討にかなりの時間をかける米国の新政権のパターンを考えると、政策が具体的な姿を現す時期は2017年夏ぐらいだというのが大方の意見だ。

トランプ氏が与える教訓もある。他でもない自国の安全保障は自ら守らなければならないという平凡な常識だ。トランプ氏のホワイトハウス入城を災難にするか機会にするかは私たちがどのように準備するかにかかっている。



허문명논설위원 ホ・ムンミョン論説委員 angelhuh@donga.com