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日韓おまつり,コスプレに目と心を奪われる。

日韓おまつり,コスプレに目と心を奪われる。

Posted October. 15, 2016 07:52,   

Updated October. 15, 2016 15:19

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知らないからと言って,存在しないという訳ではない。若者の夢や遊びの文化,考え方に触れる度にそう思う。2日,COEXで開かれた第12回日韓交流おまつりでも同様の経験をした。2つの公演が特にそうだった。一つはコスプレイヤーの公演,もう一つは日本の歌手の天月の公演だ。

コスプレは英語の「costume play」にちなんだものだ。漫画やゲームの主人公の衣装や扮装を楽しむことを指している。そういう人達をコスプレイヤーと呼ぶそうだ。コスプレイヤーが自分一人で楽しむのではなく,舞台に立てば公演となり,公演が行われれば観客も楽しめる。もちろん,韓国ではそのような公演の前例が殆どない。

在韓日本大使館公報文化院によれば,5月に延世大学周辺で初めてコスプレイヤーの公演を行ったが,反応がよかったので,今回のプログラムにも含めることになったそうだ。コスプレの原点は漫画であり,日本は漫画王国なので「コスプレ先進国」でもある。

今回の日韓交流おまつりには,日本から5人,韓国から3人の「有名な」コスプレイヤーが招かれた。これが「大当たり」した。正直,今回の舞台に立ったコスプレイヤーがどれほど有名なのかは分からない。ただ,司会者が一人一人紹介する度に舞台前からどよめきがわき起こるのを見て,有名なのだろうと推測するだけだった。現場では,彼らは既にアイドルだった。ペンライトを持って応援するグループまでいた。

舞台に出演した日本の女性コスプレイヤーの一人と話を交わした。インターネット(SNS)上の名前は跳兔(トト),25歳で福岡に在住。

-いつからコスプレをやり始めたのか。

「16歳の時からだ。10年近く経った。」

-コスプレの魅力は何か。

「憧れている漫画の主人公に扮したり,現実の世界とも一線を置くことができることに魅力を感じている。」

-いつも同じキャラクターに扮しているのか。

「そんなことはない。今日は漫画の『奇妙な冒険」に出てくるキャラクターに扮しているが,明日はまた別のキャラクターに変わることができる。』

-コスプレと現実を混同することもあるのではないか。

「私はそんなことはない。そういう人もいるかもしれない。」

-コスプレをやっていることを周りの人も知っているのか。

「家族は知っている。」

-彼氏は理解してくれているのか。(恋人の存在の有無をこんな言い回しで聞いてみた)

「彼氏はいない。好きなことをやっていて,恋愛する時間がない。」

 

重要なことは,彼女がコスプレを職業にしていることだ。彼女は今「事務所」に所属し,そのマネージメントを受け,仕事の依頼も受けている。「芸能人」になったということではないかと聞くと「まだそこまでじゃない」と照れていた。

トトさんの印象は?

扮装をしていない彼女は,普通の25歳の大人しい日本人女性だった。(日本から参加した5人のコスプレイヤーは全て女性だった。他のコスプレイヤーとは話す機会がなかったが,扮装していない雰囲気は大体似ていた。あくまでも印象に過ぎないが。)そんな人が扮装をすると全く異なるキャラクターになるので,周りが気付くわけがない。そんなところが,コスプレの醍醐味かもしれない。

いずれにせよ,初めて触れることになったコスプレは新しい職業になり得るいくつかの要素を有していた。非現実が与える開放感,原色の扮装が与える清涼感,キャラクターが持つ親近感のようなものだ。これらの要素はどのようなイベント会場でも受け入れることができるものであり,興味を引き出すだけでなく,楽しむこともできるので,活用価値が高く,発展可能性も大きい気がする。

コスプレについてもう一つ。実は,この日のCOEX会場には,自分なりに頑張って扮装してきたコスプレイヤー達が多くいたのだ。彼らは一日中会場内を歩き回りながら,周りの視線を楽しんでいた。彼らと舞台に上がったコスプレイヤー達が出会う機会はあったかって?もちろんあった。会場内には「コスプレサークル」ブースが置かれていて,出演したコスプレイヤーが相談を受けたり,記念撮影にも応じていた。かなり人気の高いブースの一つだった。

 

コスプレイヤーが登場した時以上に大きな歓声が沸き起こったのが天月の公演だった。記者は,最初「天月」という漢字に違和感があった。人気の高いJ-POP歌手の名前が,数百年前の歴史の本にでも出てきそうな詩人や僧侶の名前のようだったからだ。しかし,彼の登場を伝える司会者のコメントに,一斉に沸き起こった歓声を聞いて,私の考えは間違っていると感じた。そこでスマートフォンで検索してみた。

「1991年6月30日東京生まれ。動画共有サイト『ニコニコ動画』で2010年から活動スタート。歌の動画が再生回数4400万回以上であり,インターネット歌手の中でも圧倒的。爽やかで甘いマスクの美少年による初々しいハイトーンが特徴。優しさといたずらっ子のような魅力も人気。主に10代,20代の女性を中心に人気があるが,男性ファンも徐々に増えている」。

天月が韓国ファンに送る動画もあった。「今回初めて韓国で公演を行う。緊張しているが,楽しみにしている。頑張って歌うので,会場で会おう」といった内容だった。「こんにちは。私は天月です」と「COEXで会いましょう。」は韓国語だった。

彼の公演の様子は省略しよう。他のアイドル達の公演のように,彼の一挙一動は会場内にいた若者を虜にしていた(公演はイベントが終わる頃に行われたが,どこからあれ程多い若者が集まってきたのか分からない。)たまたま,私の隣に「天月君愛している」と日本語で書いてある紙を熱心に振っていた10代の女子学生がいたので,聞いてみた。どこがそんなに好きなのかと。「3年前から好きになった。張り上げるようなストレートな歌い方が爽やかだ。(少し間をおいて)それにイケメンだから。」。

そういえば,私は韓国人の歌手が日本や海外で現地のファンから熱狂的な愛情と支持を受けているのをテレビや報道等を通じて頻繁に見て,また,それを当たり前だと感じていたが,日本人歌手が韓国で熱狂的に支持されているのを目撃したのは今回が初めてだった。だから,不思議な感じがしたのかもしれない。

私は天月が舞台に上がる方法にも興味をもった。彼は司会者の紹介で登場し,公演は行わずに音響を細かくチェックした。そんなことは前もって点検すべきだったのではないかと思うくらい長い時間をかけていた。その中で自身のヒット曲の一部を歌ってみたり,舞台の上を歩き回りながら音量や音質をチェックしていた。まさにリハーサルのようだった。他のアーティストは決して公開しなさそうな姿を彼は全く気にする様子もなく公開したのだ。その上で,音響がちゃんと動かないと公演を行うことができないとの意思を司会者を通じて伝えていた。待ちわびていた若者達は当然心配の声を上げていた。

本当に音響の状況が悪かったのか,私には分からない。ただ,確実なことは,最近のアーティストは,何か新しいパフォーマンスを行うために(もちろん観客の興味を引くためだ)不断の努力を行っているということだ。舞台の上での変化は舞台の外よりも遥かに速い。そして,仮にそれが騙し,騙されるものであったとしても舞台の上だと楽しさに変わる。

若者であれば誰もが知っているコスプレのことで,あるいは日本に興味がある若者なら名前くらいは知っているであろう天月のことで,何を騒いでいるのかと言われるかもしれない。しかし,年齢が興味の領域を制限していることは確かだ。ある程度歳を取った人にコスプレと天月に関する知識を求めることには無理がある。

古い世代の言い訳はここまでにして,当日,若者が興味を持ちそうなプログラムを行い成功を収めたことは,とても喜ばしいことだ。今後日韓関係を率いるのは,この行事を企画した人でも後援した人達でもなく,現場で楽しんでいる若者達だからだ。

老若男女問わず,祭りの現場で新しい公演や新しい人に出会うことは楽しい。日韓交流おまつりが究極的に求めていることはそういったことなのかもしれない。頭で相手を理解するのではなく,心で相手を感じて欲しいと。同日,祝辞を述べた趙允旋(チョ・ユンソン)文化体育観光部長官の言葉が頭に浮かんだ。「文化とは水のように流れ,水のように混ざり合う」。

 

沈揆先 大記者 ksshim@donga.com