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[オピニオン]沈揆先コラム

Posted August. 01, 2016 07:08,   

Updated August. 01, 2016 10:18

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帝国主義時代の戦時下にあった女性に対する組織的な人権テロを清算しようと財団が正式に発足する日、66歳の女性の理事長が一面識もない21歳の若者にカプサイシンテロに遭った。俄然した。旧日本軍慰安婦だったハルモニ(おばあさん)たちのための「和解・癒やし財団」の開所式を行われた先月28日のことだ。私は、その日、財団の理事になった。

2ヵ月前、財団の準備委員になると、新聞社の内外から「なんで苦労を買って出るんだ」「難しい仕事を引き受けたものだ」と言われるまでも、まあそんなものだろうと思った。だが、病院の救急室で金兌玄(キム・テヒョン)理事長の充血した目と戸惑いと虚脱感、怒りとが入り混じった表情を見て「現実」に気づかされた。

だからと言って、財団理事を辞めるつもりはない。昨年12月28日に韓日両国間でなされた慰安婦合意の不可避性を理解しているからだ。合意には、はっきりと、確かに満足していない。韓日両国政府の当局者や政治家、オピニオンリーダー、ジャーナリストの意見を聞いていくうちに、「不可能な最善」を追い求めるよりは「可能な次善」を支持するようになったという意味だ。

光復(日本の植民地支配からの独立)以降、韓日間に横たわる難問を巡って、非難を覚悟で決断を下したケースは3回しかなかった。1965年の朴正煕(パク・チョンヒ)大統領が押し進めた韓日国交正常化、1998年の金大中(キム・デジュン)大統領による日本大衆文化開放、そして昨年の朴槿恵(パク・クンヘ)大統領の慰安婦合意だ。先の2件も(当時は)激しい非難と反発を招いたが、今日における評価はがらりと変わった。私は、そういう目線で慰安婦合意を見る。

ハルモニたちと市民団体が長い間、慰安婦問題を社会問題として取り上げ、その解決に向けて努力してきた功は大きい。誰も否定できるものではない。だが、24年もかけて取り組んできたのだから、24年前に要求した通りに合意がなされなければ受け入れ難いというのは納得し難い。もう一つ。今回の合意と財団の発足に対してほとんどのハルモニたちが反対しているという話は、今暫ししまっておいてもらいたい。実際にそうなのであれば、私が先に財団の看板を下ろして、国民向けの謝罪を行うよう要求する。

野党が政権を担当することになれば、合意を破棄するだろうか。破棄するとしたら、英国のEU離脱よりも至難の道が待っているだろう。日本は再交渉に応じようとしないだろうし、交渉に応じるとしても時間稼ぎをするだけだろうし、合意がなされるとしても12・28合意以上のものは不可能、というのが私の判断だ。

ただ、政府間の合意だから無条件履行するべきだとか、ハルモにたちの余命が残り少ないので合意を急いだといった話は、あまりしたくない。状況が本質を支配しているような気がするからだ。

施行の過程を通じて支持を取り付けるべきであるという点で、もしかしたらスタートラインに立っていると言えよう。財団の役割は、政府の義務の中で最小限に過ぎない。和解と癒やしの外にも「記憶」「慰霊」「研究」「教育」などが必ず必要だ。歴史記念館を作るべきだと要求する声も多い。政府予算でハルモニたちが晩年を楽に過ごせるような施設を作り、ゆくゆくはその施設を拡大して記念館を作る案を真剣に提言する。10億円を丸ごとハルモニたちのために使えるよう、財団事務所の経費や人件費などは韓国政府が負担するべきだという財団理事たちの要求を政府が受け入れたのは励みになる。

市民団体は、これまでの経験や成果、情熱をもとに、世界に出て戦争と暴力に露出されている女性たちの権益のために活躍してもらい、国は彼らを積極的に後押しするのはどうだろうか。

日本は10億円と少女像の移転を連携させないで、10億円の使途についても、あまり干渉しようとしてはならない。首相と駐韓大使らが首脳会談でハルモニたちとの面談を通じて、真心を伝えるような方策を講じるべきだ。

週末に東京でソウル特派員を経験した日本の多くのジャーナリストたちに会った。ある日本人記者からは「通勤の際に警察が保護してくれるのか」と聞かれた。財団発足日のテロと大学生が記者会見場を占拠する様子が日本に広く伝わったからだろう。こういう質問は二度と受けたくない。

昨日は東京大学で「韓日両国間合意以降の慰安婦問題」をテーマにしたシンポジウムが開かれた。両国の著名な学者やジャーナリストが多く出席したが、満足できるものではないが受け入れるべきだという意見から、今すぐ廃棄すべきだという意見まで様々な意見が出た。出席者たちが相手国よりは自国の交渉当局や政治、社会的雰囲気により批判的だったことは印象的だった。大まかに言って、補いながら施行していくべきだという意見が優勢だった。そのためには合意で全てが終わったと思い込んではならないという指摘に賛同する。

私が財団理事を辞めると言っても引き止める人はいない。しかし、理事をしている間は信念を持って発言し、行動したい。問題を抱えたままでの「見切り発車」となったが、韓日間の慰安婦合意は誰が何と言おうと、韓日関係3.0時代の最初の試金石になると信じているからだ。



전문기자