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[オピニオン]サッカーは偉大だ

Posted May. 25, 2002 11:04,   

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1966年のイングランドワールドカップで、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が「東洋の真珠」パク・トゥイクの決勝ゴールでイタリアを破って8強入りした時、韓国の軍事政権は、イタリアに劣らぬほどの衝撃を受けた。衝撃の質でいえば、朴正煕(パク・チョンヒ)政権側のほうが勝るかもしれない。イタリアのサッカーファンなら、数日食欲をなくして、腹立ちまぎれに夫婦げんかでもすれば済むことだが、韓国の朴政権にとっては、その程度ではおさまらない「体制の問題」であった。今考えれば、サッカーがなぜ体制と結びつくのかと言うかもしれないが、当時はそのように余裕のある状態ではなかった。当時は、北朝鮮の生活状況が韓国のそれをしのいでいたし、金日成(キム・イルソン)政権は、それを体制の優越性の結果であると主張していた時だった。

なかでもヨーロッパでの北朝鮮サッカーの旋風は、北朝鮮に重要なプレゼントとなった。北朝鮮は、以前からヨーロッパの韓国人留学生を抱き込もうとしていたが、サッカーが彼らの北朝鮮に対する関心を大いに高めたのだった。「東ベルリン事件」が起こったのは、あいにくにもそのすぐ1年後のことだった。1967年7月に中央情報部が発表した「東ベルリンを拠点とした北傀対南赤化工作団事件」がそれだ。この事件は当時「6・8不正選挙」を糾弾した大学キャンパスのデモを一気に静めた。多少論理を飛躍させると、パク・トゥイクの決勝ゴールは、韓国の軍事政権の体制安定にもプレゼントをしたことになる。

ともあれ北朝鮮がイタリアを破って8強入りすると、朴正煕政権は、韓国サッカーもこのままではいけないと考えた。「サッカーの近代化」を国家事業のレベルにまで引き上げたのだ。そして、キム・ヒョンウクの中央情報部が乗り出した。「陰地で働き、陽地を志向する」という情報部の部訓から名づけた「陽地チーム」は、1967年2月に誕生した。キム・ホ(水源三星監督)、キム・ジョンナム(蔚山現代監督)イ・フェテク(全羅南道ドラゴンズ監督)らが、当時の最高選手が陽地のユニフォームを身にした。

1969年10月12日にソウルで開かれたメキシコワールドカップの日本との予選試合。前半に2ゴールを先制した陽地チームが、後半に2ゴールを入れられて引き分けとなり、ちょうど試合を観戦していた朴正煕大統領が、隣にいたキム・ヒョンウク情報部長にひとこと言ったという。

「韓国選手が、しっかり食べていないようだな」

大統領の小言を聞いた金部長は、その日すぐに陽地チームに「一日三度の食事にカルビを食べろ」と特別に指示したという。当時としては、相当の特恵であっただろう。

30年余りの歳月が流れた2002年5月21日の夕方、ソウル世宗路(セジョンロ)の交差点。一群の「レッドデビルズ(赤い悪魔、サッカー韓国代表の公認サポーター組織)」が、東亜(トンア)日報の大型電光掲示板を見ようと集まって、太鼓をたたき出した。済州西帰浦(チェジュ、ソギィポ)で行なわれた韓国対イングランド戦を中継するスクリーンを見て、彼らは「大韓民国」と叫びつづけた。後半6分にパク・チソンのダイビング・ヘディングシュートがイングランドのゴールを襲うや、ソウルの中心街が彼らの歓呼で包まれた。彼らは試合が終ってからも、夜更けまで太鼓をたたいて「大韓民国」と連呼した。

大統領の息子らの不正に加え、数え切れないほどの「ゲート」事件で満身瘡痍(そうい)になった大韓民国、新しい大統領候補らに明日の希望をかけるというが、どうも片隅がぽっかり空いたような大韓民国、これから10年間何をして稼いで生きていくのか、考えるだけで胸が重くなる大韓民国、にもかかわらず若者達は声高に「大韓民国」と叫ぶ。サッカーが一体何だというのだろうか。

しかし、若者達の「大韓民国」に対する愛までなかったら、この世知辛い世の中に情を寄せるところがあるだろうかと考えると、サッカーは大したものだ。史上初めて16強入りに成功した時の、溢れんばかりの国民の歓呼を考えただけでも、サッカーは偉大である。一つのゴールで、一瞬のうちに国民統合を果たすサッカーは、驚異的である。

しかし、もはやサッカーが権力にプレゼントを与えることはできない。ワールドカップの熱気を口実に、権力の腐敗不正を適当に覆い隠そうとすれば、若者の「大韓民国」への愛を冒とくすることになる。年を越しても絶えない腐敗シリーズからサッカーに目を向けることは、国民の非ではない。あまりにもうんざりして、しばらくサッカーに寄り掛かって休みたいだけだ。国民が息抜きをしている間にも、検察とマスコミは休めない。権力の腐敗をえぐり出さずには、サッカーがどんなに素晴らしいプレゼントをしても、明日の希望を語れないからだ。どんなに「大韓民国」を声高らかに叫んでも、空虚な響きとなって返ってくるからだ。

明日の夕方、韓国の太極戦士達が世界最強のフランスと最後の親善試合をする。若者達はまたも「大韓民国」を連呼するだろう。それは、病んだ大韓民国を立ち上がらせる声である。明日の希望を作り出す活力だ。腐敗した権力を辱しめる叫びでもある。サッカーの力だ。サッカーは偉大である。

全津雨(チョン・ジンウ)論説委員