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トランプ氏の「ホラ」、「慣れ」」という逆風

トランプ氏の「ホラ」、「慣れ」」という逆風

Posted October. 15, 2018 08:02,   

Updated October. 15, 2018 08:02

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「80年間何の進展もなかった。3ヵ月が経ったことをとやかく言うのか。呆れる」

トランプ米大統領は9日(現地時間)、ホワイトハウスの執務室で、米朝対話の進展速度をめぐって不満を述べる現地報道機関や専門家たちにこのように話した。

シンガポール米朝首脳会談が終わってあまり経っていないのに、成果がないと批判の矢を向けるのはひどいということだ。

トランプ氏が、自身が今まで成し遂げた米朝対話の成果を強調しようと繰り返してきた表現だ。新しく新鮮な部分は、米朝間の緊張局面の期間を「80年」と言及したことだ。

今年で韓国戦争の砲声が止んで65年経った。しかし、トランプ氏の「頭の中の歴史本」では、数字がその時その時で異なる。トランプ氏は4日、ミネソタ州での遊説で、「(米朝対立が)75年間続いた。(シンガポール会談が終わって)せいぜい3ヵ月」と述べた。2日後の6日、カンザス州での遊説では、「70年間、(前任者たちは)何をしたのか」と述べた。そして3日後の9日には突然「80年」という数字が登場したのだ。

トランプ氏は必要に応じて、重要な首脳会談の合意文に書かれた条項の順序も変える。トランプ氏は同日、執務室で記者団に、「私たち(トランプ氏と金正恩朝鮮労働党委員長)は、(シンガポールで)『第一のポイント』で「非核化」について話した。メディアはこれを逃すが、実際に(非核化が)『第一』だった」と話した。しかし、実際にシンガポール米朝首脳会談での共同宣言で、「第一のポイント」は「(米朝が)新たな関係を樹立することで約束した」という内容だ。非核化関連の内容は「第三のポイント」に含まれている。

トランプ氏は31年前、自身の著書『取引の技』で、「私は宣伝のために実力以上の虚勢を張る。人々は何かが最も大きく、最も偉大で、最もすばらしいと信じることを望む。若干の誇張は決して害にならない」と書いた。この話法を、トランプ氏は、「誠実な誇張(truthful hyperbole)」と呼んだ。実業家時代に使ったこの話法を、トランプ氏は政権2年目の大統領になっても愛用している。シンガポール会談後、北朝鮮の非核化が遅々として進まなかった期間を少しでも短く見せるためなら、韓国戦争が実際にいつ終わったのかは重要ではない。自身が直接署名した米朝共同宣言の条項の順序も変えて話すことができる。時には嘘を真実のように美化することも躊躇しない。

トランプ氏は、「誠実な誇張」が自身を大統領にしたことは明らかだと言わんばかりに、就任後にもこの方式で大衆と意思疎通してきた。就任式に参加した聴衆の規模が史上最大だと主張した。大統領選で勝ったものの全体総得票数で民主党のヒラリー・クリントン候補に押されたのは「不法投票」が理由だと言った。すべて事実でないと判明したが、トランプ氏本人は全く意に介さない。主張の真偽よりも安定支持層の熱狂的な支持が重要なためだ。

しかし、このような意思疎通の方式に支持層ですら疲労感を覚える兆しがうかがえる。政治専門メディア「ポリティコ」は11日、トランプ氏の支持者が愛聴するFOXニュースで放送される大統領の遊説視聴率が以前と同じでないと報じた。「ポリティコ」が視聴率調査機関ニールセンの資料を分析したところ、大統領の遊説中継は、昨年多くて全国視聴者400万人を確保したが、今年に入って250万~350万人にとどまっている。最近、遊説が増え、注目度が落ちたことが原因かもしれないが、政権が行うすべてのことが「偉大だ」といった誇張した表現に一部の支持者は以前ほど興味を抱かないという分析だ。

「誠実な誇張」は、トランプ氏にこれまで少なからぬ成功をもたらした。しかし、その「魔法の杖」は有権者の「慣れ」という決して侮れない相手に向き合い始めた。その1次対決の成績表が11月の中間選挙の結果になる。選挙が終わるとすぐに政権後半に入る。自身が乱発した豪語に慣れた米市民に新鮮な成果を示さなければならないトランプ氏の政治的負担は、ますます大きくなるだろう。


韓基渽 record@donga.com