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やわらかさの不足

Posted August. 15, 2018 09:34,   

Updated August. 15, 2018 09:34

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芸術性が溢れても、やわらかさが足りない芸術家がいる。3日前に亡くなった英国の作家V・S・ナイポールもその一人だった。何より彼は、自分がトリニダード出身であることを恥ずかしく思い、トリニダードの人々を傷つけた。彼にとってトリニダードは音楽とダンスだけで、文化と文明が不在の野蛮なところだった。彼は2001年にノーベル文学賞を受賞した時も、英国とインドに栄光を捧げるとし、トリニダードについては言及しなかった。

アフリカに対してもやわらかさがなかった。ナイポールとってアフリカは原始的で野蛮で「未来が全くないところ」だった。イスラム世界に対する考えも同じだった。彼にとってイスラムは、非論理的で偽善的で、潜在的な狂信徒であり、テロリストだった。これほどになると、第3世界に対するナイポールの考えは嫌悪に近かった。彼は第3世界出身でありながら、その世界の暗い現実だけを見て、自分たちの誤りは認めない植民主義者などの考えを学習して受け入れ、彼らを代弁した。この上ない逆説だった。

女性に対する見解も完全なはずがなかった。ナイポールにとって女性は、「感傷的で世界に対する狭い見解」が特徴だった。彼は、どんな文章でも1、2段落読めば、それが女性の文章かどうか分かると自信を持った。彼は、偉大な英国作家ジェーン・オースティンを鼻でせせら笑い、自分に匹敵する女性作家は誰もいないと言った。問題は女性嫌悪の感情だった。

ナイポールの小説を高く評価しながらも、留保の立場を取った米学者アーヴィング・ハウは、ナイポールの問題を「嫌悪感の過剰とやわらかさの不足」と診断した。そうだ。ナイポールは『ビスワス氏の家』や『暗い河』のような古典的な小説を書き、ノーベル文学賞まで受賞した驚くべき才能の作家だったが、文学の本領が他者を包摂するやわらかさと寛容にあるということを度外視した。追悼の対象になった彼は、なぜ生前にこの世の他者を傷つけて生きなければならなかったのだろうか。

文学評論家・全北大学教授