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現金のない社会

Posted July. 18, 2018 09:01,   

Updated July. 18, 2018 09:01

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現代では世界の国々が名目貨幣(Fiat Money)を使う。ラテン語から来た「fiat」は、「なるようにしなさい」という意味。過去の米のような実物貨幣の代わりに、国が保証するので「お金になるようにしなさい」という意味だ。2008年のグローバル金融危機当時、米中央銀行が数兆ドルの金を「発行した」という言葉も比喩である。基軸通貨国である米国の信用を担保に、コンピューターのキーボードを叩いて、世界のオンライン金融網に数値を入力したに過ぎない。貨幣は、現在は紙幣や硬貨のような物質の「粒子」ではなく、デジタル上の0と1で表現される「波動」で取引される。

◆2007年にケニアの通信企業サファリコムと英ボーダフォンが立ち上げたMぺサは、携帯電話のモバイル口座にお金を保管したり、送金できるサービスだ。このサービスを導入したアフガニスタン警察は、給料が30%も増えた。警察首脳部が、その一部を横取りして支給していた現金を、政府がモバイル口座に直接支給したおかげだ。このようなサービスは、発展途上国で腐敗を減らし、租税収入を増やした。現金は腐敗と脱税の痕跡を見つけるのが難しいが、モバイルマネーは記録が残るので、追跡が可能だからだ。

◆スターバックスが、世界で唯一、韓国で「現金のない店」を運営している。16日から103カ所に拡大したスターバックスコリアは、既存の3ヵ所で試験運用した結果、現金取引率が0.2%水準まで下がったと発表した。現金を精算するのにかかっていた月平均約25時間は、サービス強化に活用する。ブロックチェーンの技術を活用した仮想通貨までを店舗で使用できるようにする計画であるスターバックスが、韓国をテストベッドにしたのだ。

◆「現金のない社会」は、金融取引が明らかになることを願わない個人や現金使用に慣れている高齢者などには、嬉しいことではない。モバイル決済天国である中国の人民銀行すら13日、「現金の使用を拒否することは、法定通貨である人民元の地位を傷つけ、消費者の選択を損なうことだ」と指摘した。中央銀行の独占的貨幣発行さえ拒否する仮想通貨が登場したこの頃、貨幣の変身は避けられないとしても、現金を使用できる権利はまだ必要だ。


鄭世鎭 mint4a@donga.com