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ニューヨークのスラム街を覆った資本主義の影

ニューヨークのスラム街を覆った資本主義の影

Posted November. 25, 2017 08:34,   

Updated November. 25, 2017 09:16

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著者のジェイコブ・リースは、デンマーク生まれの米国人ジャーナリスト。1870年、21歳の時に米国に移住した後、しばらく大工仕事や農場の雑用をして食いつないでいた。ニューヨークのスラム街で食事の無償提供を受けて暮らし、自殺を考えたこともあった。

紆余曲折の末、1873年にブルックリン・ニュースの記者として働きはじめ、4年後にはニューヨーク・トリビューン紙に所属し、マンハッタンのスラム街の犯罪や貧困問題を主に取材した。彼がカメラに収めた対象は、移民や貧民が密集した共同住居地だった。

1世紀半前のニューヨークのスラム街を現時点で本を通じて見なければならない理由は何か。この本を読むかどうかの選択は、本を終えてリースが書いた下記の文に共感するかどかによって左右されるだろう。

「多くの人々が苦しい生の鎖にしばられ、共同住宅で不安に震えている。すでにこの都市は自らの任務を知る前に手のほどこしようもない膨張の波に踏みつけられた。その波がつくった階層間の溝は、日々大きく広がっている。貴族を庇護し貧民を押さえつけるあの建物をこのまま放置するべきか」

本の最後の解題が指摘したように、リースの前にも都市空間を撮影したカメラマンは多かった。貧困に苦しむ人々の姿をカメラに収めたのも彼が初めてではない。しかし、当時、都市空間を被写体にした写真は、たいていが繁華街や華やかな建築的ディテールを捉えたものだった。

一方、一時生死の境をさまよって生活した地を振り返る著者の写真には、美学的成就への強迫の跡がない。自惚れによる未熟な憐憫もない。彼のファインダーは、カメラの前の対象と境界を引かなかった。格好よく撮ろうという気配もないため、時間が経った今でも生き生きしている。

「旅館の梁の間にぶら下がった帆布は、7セントの宿泊客のための寝床だ。宿泊客が夜中に何度も転げ落ちるが、隣の寝床につくほどには転がらない。寒い冬の夜、寝床がすべて埋まっている時、私は何度か客室の真ん中に立って、規則的な発動機の音のように聞こえるいびきに耳を傾けた」

リースは、写真のスライド ショー講演会を数回開き、スラム街の問題を社会に訴えた。彼の本を感銘深く読んだ読者の中には、1890年代半ばにニューヨーク警察庁長官を務めたセオドア・ルーズベルトもいた。大統領就任後、ルーズベルトは大都市のスラム街問題を解決するために積極的に動いた。リースは大統領顧問として活動し、1902年に続編『スラムとの戦い』を出した。

「平和なうたた寝をする世論は、共同体の品位と健康が極端に侵害されたり、凄まじい伝染病が玄関のドアをたたく時、蜂の大群のように立ち上がる。しかし、これはすぐに消え去る怒りだ。このような不安定さは、関係当局の遅い対応にかなりの部分責任がある。」



孫宅均 sohn@donga.com