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癒されなかった傷が招いた悲劇

Posted April. 15, 2017 08:34,   

Updated April. 15, 2017 08:36

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「歴史を知れば幸せになり、知らなければ不幸になるのか?ここで『歴史』がもし『真実』を意味するなら、この本の答えは『そうではない』だろう」

翻訳者の言葉だ。

「歴史は勝者の記録」というのは常套文句だが、多くの人が同意する。必ずしも「勝者」でなくても、史実の記録は、ペンを持つ人の緻密さと誠実さ、価値観の厳正さにその信頼度を絶対的に依存する。

 

ベルギー出身の歴史学者である著者は、17年前に初めて出版された同書の2015年改訂版の序文で、「第2次世界大戦に対する私の研究は完璧に客観的ではない。客観性を掲げるものの多くは、慣れ親しんだ通説、客観的であるように通用する支配的な見解にすぎない」と書いた。

著者が研究した主対象は米国だ。著者は、第2次世界大戦で米国が遂行した役割を扱った歴史研究は、大概が「和やかな歴史的文学」に近いと指摘する。戦争で米国の役割を左右したのは、ハリウッド映画で繰り返し見せてくれる自由守護の理想ではなく、大企業と金融会社の利益追求の欲望だったというのが著者の見解だ。

 

「米国という国の運営主導権を握ったパワーエリートは、他の何よりも経済的利益と事業の利害関係を重視する。この国の神経中枢はフォード、ゼネラルモータース、IBMのような巨大企業だ。IBMは、ヒットラーの第3帝国で最高の好況を享受した。IBMのドイツの子会社デマーグは、ユダヤ人の財産を差し押さえて抹殺するまでのすべての事の処理を引き受けた『パンチカード技術』を提供した」。

フォード創立者のヘンリー・フォードは1938年7月30日、75才誕生日にナチスドイツが外国人に与える最高勲章を得た。米クリーブランド駐在のドイツ領事からヒットラーが送った勲章を受け取った写真に写るフォードの表情は自負心に満ちていた。ドイツ・ケルンにあったフォードのドイツ支社フォード・ヴェルケは1930年代、ヒットラーが労働組合を無くしたことで大きな利益を得た。

著者は、ヒットラーが起こした軍需産業の主軸となった米国の企業がドイツとの戦争を望まず、1941年12月11日、ヒットラーの突然の宣戦布告によって米国が意に反して戦争に引き込まれたと見た。ロシア・モスクワ戦線で危機を迎えたヒットラーが、米国の真珠湾を爆撃した日本をソ連に対する対抗馬にしようと米国に戦争を宣言したと説明する。

東アジア地域での主導権を確保するために日本との戦争を望んだ米国が意図的に真珠湾の奇襲を誘導し、ソ連が東アジアに進出する前に戦争を終わらせるために原爆投下を急いだという解釈は明らかに「客観的」でない。しかし、防衛産業という単語で純化された軍需産業が昨今の米経済を起こした根幹であることは間違いのない事実だ。米国の「良き戦争」の話は冷戦を経て着実に変形され再生産されている。

 

翻訳者が言った「幸福」が「現実無視」を意味するのでないなら、慣れ親しんだ歴史を新しく眺める窓として同書は大いに役立つ。



孫宅均 sohn@donga.com