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KAIST研究チームが脳内恐怖代謝酵素を発見、外傷後ストレス治療薬の開発に活用

KAIST研究チームが脳内恐怖代謝酵素を発見、外傷後ストレス治療薬の開発に活用

Posted February. 08, 2019 08:18,   

Updated February. 08, 2019 08:18

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「高い所から落ちて命を無くした仲間を目撃した主人公が激しい衝撃を受ける。以後、主人公は深刻な高所恐怖症を患って高いところに上がれなくなる」

アルフレッド・ヒッチコック監督の映画「めまい」の中の主人公は、恐ろしい記憶(仲間の死)と、特定刺激(高いところ)が結合した恐怖症を患う。だから命への脅威のない安全な地域であっても、一応高いところであれば恐怖を感じる。心的外傷後ストレス障害(PTSD)も似ている。浦項(ポハン)地震を経験した住民は、建物の中にいるだけで、建物が揺れた「あの日」の恐怖を感じる。

このように恐怖症やPTSDは、脳に特定刺激と一緒に恐怖が思い出されて起こる。最近、このような脳の中の恐怖記憶を抑制して、PTSDや恐怖症を治療する試みが成果を上げている。KAIST生命科学科のパク・ジンア研究員とキム・セユン教授チームは、脳から特定酵素を除去すれば、恐怖の記憶をなくすことができるという事実を動物実験で明らかにし、「米国科学アカデミー紀要」の1月28日付に発表した。

研究チームは、脳の興奮性神経細胞で作られる「イノシトール代謝酵素」に注目した。イノシトールは、食べ物を通じて供給される栄養成分だ。イノシトール代謝酵素は、イノシトールを脳活性を調節する物質に変えることに関わる酵素だ。

研究チームは、脳の中にある興奮性神経細胞(ニューロン)からイノシトール代謝酵素を作らない遺伝子組み換えマウスを作って、二つの実験を行った。まず、強い音と一緒に電気刺激を与える「恐怖刺激」の実験を行った。実験後、マウスは音だけを聞いても、電気ショックの恐怖を思い出して凍りつく姿勢を取った。続いて研究チームは、同じマウスを対象に、電気刺激のない音だけを聞かせる実験を追加で繰り返した。「音がしても恐怖を感じる必要はない」という新たな学習をさせるのだ。人を対象としたPTSDの実験でも使う方法で、例えば、「飛行機の音がしても戦争ではないから大丈夫」と繰り返して学習させて、戦争PTSDを治療する方法だ。元々このプロセスは長い時間がかかる。ところが、イノシトール代謝酵素を作らない遺伝子組み換えマウスは、このような「恐怖消去」の学習がはるかに速かった。

キム教授は、「恐怖の記憶をなくすプロセスはまだほとんど明らかにされておらず、いくつか発見された記憶調節因子も学習能力を一緒に調節することが多く、薬として開発するのが難しかった」とし、「イノシトール代謝酵素は、学習能力を調節せず、記憶だけを除去するので、恐怖治療新薬を開発するための良い標的になるだろう」と語った。


ユン・シンヨン東亜サイエンス記者 ashilla@donga.com