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展示場の入口に織機がぽつんと一つ…「アニー・アルバース」展

展示場の入口に織機がぽつんと一つ…「アニー・アルバース」展

Posted January. 03, 2019 07:39,   

Updated January. 03, 2019 07:39

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絵画の作品も、彫刻の作品もない。大きな織機が一つ置かれ、観客を迎えるだけだ。その左側には、この織機で布を織った工房職員が笑顔の大きな写真がかかっている。英ロンドンのテート・モダンで開催されている「アニー・アルバース」回顧展の展示場入口の独特の風景だ。

モダニズム・アーティスト、アニー・アルバース(1899~1994)の展示場に織機が登場したのは、彼女の芸術素材が糸と布だからだ。男性の芸術家が染料で抽象画を描いたとすれば、アルバースは図案で下絵を描き、織機で糸を編み、布で抽象芸術を描いた。

展示場の入口を通ると、額の中の絵の代わりに様々な色とパターンの織物が現れた。カバンやスカーフ、カーペットに見ることができるパターンのある布を額に入れて壁に縦にかけると、モンドリアンの絵のように見えた。観客はリズミカルに配置された色と糸の結び目で描かれた線に従って新しい抽象画に出会った。

糸で編まれたこれらの布は、どのように芸術作品になったのか。答えは20世紀の欧州の特殊状況にある。1914年に第一次世界大戦を経験した欧州は、深刻な混乱を経た。古代文明の発見、ダーウィンの「種の起源」などで宗教と哲学の伝統が揺らいだ。多くの人命を奪った戦争は幻滅をもたらした。

この時期の芸術家は、過去と決別して芸術が何かを根本的に問い詰めた。芸術は特定の目的のためのものではなく、芸術そのものと認めなければならないということだ。アルバースは、「糸自体の形態を探す」とし、「絵画織(pictorial weaving)」を作る。使うためではなく、かけて見るために作った織物は、糸と布そのものの意味を探求した結果だった。

アルバースの初の英国の大規模回顧展であるこの展示は、女性芸術家にスポットライトをあてる動きから始まった。アルバースは最近までデザイナーに分類されたり、夫の画家ジョセフ・アルバースと共に語られた。男性の影に隠れていた彼女の芸術世界は、約300点の作品を通じて深さを表わした。

見慣れない素材であるため、観覧客の理解を助けるためのキューレーティングも注目される。展示場の開始は織機で、最後は様々な糸に触れることができるコーナーが設けられている。最も混雑したこの展示館では、手で触感を経験する観客の嘆声が続いた。

生涯にわたるアルバースの探求は、古代ペルーの華やかなカーペットにつながった。晩年のアルバースは、暮らしの中で湧き出る古代人の強烈な見解の言語に耽溺した。彼女の幾何学的な布と原始的カーペットの対照は、観念から抜け出せず閉じこもっている現代人の苦闘を表わす。


金民 kimmin@donga.com