Go to contents

彼女と共に愛のお目覚…全米を虜にした実話ロマンス

彼女と共に愛のお目覚…全米を虜にした実話ロマンス

Posted July. 09, 2018 08:52,   

Updated July. 09, 2018 08:52

한국어

恋愛結婚に反対する親と昏睡状態に陥った恋人。その間、男はまことの愛に気がつく。映画のシノプシスだけでは魅力を感じないものの、なんと「ラ・ラ・ランド」よりも現実的で「アニー・ホール」よりも心温まる愛の展開に驚く。本年度アカデミー脚本賞にノミネートされたロマンティック・コメディ映画「ビックシック僕たちの大いなる目覚め」だ。

映画の主人公は舞台で笑いを取る駆け出しのコメディアン、クメイル・ナンジアニ。アメリカHBOの人気ドラマ「シリコンバレー」にも出演した俳優の彼と妻エミリー・ゴードンとの実話だ。話は彼が有名になる前、ウーバーの運転をしながらお金を稼ぎ舞台に立っていた頃にさかのぼる。クメイルとエミリー(ゾーイ・カザン)はコメディアンと観客として出会う。

二人が互いのことを知っていく過程では運命よりも些細な現実が浮き彫りになる。エミリーはクメイルと楽しい一夜を過ごすも「今は恋愛している場合じゃない」という。クメイルも「僕も恋愛する気はないので良かった」と応じ、二人はもう会わないことにした。この時、車内のルームミラーをちらっと見るクメイルと車窓から外を眺めるエミリーの視線がすれ違う。コテコテの恋愛よりもあっさりした現実的ロマンスを強調する演出のセンスが際立つ。製作者のジャド・アパトーは「はじまりのうた」「40歳の童貞男」などの華麗なるロマンティック・コメディー・フィルモグラフィーを誇るヒットメーカー。

映画の秀逸はエミリーが昏睡状態に陥り、彼女の親とクメイルが出会う過程に見られる。パキスタン出身のクメイルはムスリムに関する偏見をネタとして取り上げ観客の笑いを誘う。自分の弟が白人女性と付き合っていることを知った兄に大声を出されると、クメイルはとっさに「なんでもありません、私たちもテロリストが嫌いです!」と言って周りを落ち着かせる。またクメイルは芸を披露している途中、ある白人観客に差別発言で野次られる。するとエミリーの母親ベス(ホリー・ハンター)が猛然と抗議してくれる場面も見ていて痛快だ。家族を失いそうな最悪の状況で素直に向き合い、ジョークを交わしながらクメイルとエミリーの親はどんどん距離を縮めていく。

他方、クメイルと彼のパキスタン両親との関係を通しても映画は21世紀、アメリカ社会が直面している新しい世代間、文化間の対立を描き出す。伝統は受け入れがたいが家族を失いたくないがため本音を打ち明けることができず、彼は毎週、両親が紹介する女とお見合いをしていた。急変する韓国社会でも珍しくない光景だ。

ウッディーアーレンの歴史的なコメディー「アニー・ホール(1977年作)」も恋愛に関する至極シニカルな笑いをそそるが、「ビックシック」はシニカルではあるけれど究極は互いの相違を受け入れるため人間味があり暖かい気持ちになれる。この素朴な恋物語が北米で17週の興行成績5600万ドルの収益をあげた所以だ。ベタなラブコメに飽きた方にぜひお勧め。18日から上映★★★★


金民 kimmin@donga.com