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オルハン・パムクが投げかける父子関係に関する質問

オルハン・パムクが投げかける父子関係に関する質問

Posted July. 07, 2018 08:09,   

Updated July. 07, 2018 08:09

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父と息子の間で起きた悲劇を扱った神話としては、ソフォクレスの戯曲「オイディプス」が有名だが、中東でも戦場で息子のシュフラブに気づかず殺したリュステムの物語がある。ペルシャの古典「王書」に出てくるこの物語は、オイディプス神話と共に、小説全般に伏線として溶け込んでいる。主人公は、実父の不在と父親のような存在である師匠との間で、2つの昔話を思い出して苦悩する。

ノーベル文学賞受賞者である著者が、今回は息子と父親の関係を探求した。イスタンブールに住んでいる高校生ジェムはある日、父が消えると、大学授業料を工面するために井戸掘り仕事をしようと30マイルも離れた都市ウェンゲレンに発つ。井戸掘り技術者であるメフメットは、秘密めかしていた父と違って、毎晩神話を聞かせ、人生についてのアドバイスを惜しまない。赤毛の女性に会って恋をし、メフメットに密かに嫉妬を感じていたジェムは、メフメットが入っていた井戸に誤ってバケツを落とした後、彼を殺したと信じる。故郷に慌てて逃げてきた彼は、後々ウェンゲンを再び訪れて再会した実父と赤毛の女性、メフメットの真実を知ることになる。

物語のあちこちには、「イスタンブールの作家」と名乗る著者のアイデンティティがはっきり表れている。トルコ、中東、アジアの都市を背景に東西の古典を現代主人公の人生の中で絶妙に溶かしている。神話とともに主人公の過去、現在の物語が絡み合った多層的な設定が、著者の底力を感じさせる。

エディプスコンプレックスなど、精神分析で言う父と息子の関係、自由と服従、真なる自我、運命についてあまねく考えるきっかけを投げる。父に気づかず殺したオイディプスと「王書」の神話の前でジェムが感じた複合的な感情描写と早い展開のおかげで、退屈を感じる隙間すらない。


趙允卿 yunique@donga.com