「脇役もし主人公もする。そんなものでしょう。俳優の役に軽重がありますか」
俳優のイ・スンジェ氏(83)は今年でデビュー62年目を迎えた。出演したドラマと映画だけでも約200編。もうのんびりしてもいいと思われるが、仕事への意欲はすごい。5日に上映する映画「トック」では、役が気に入って「ノーギャラ」で出演を決めたほどだ。
ソウル鍾路区(チョンロク)のあるカフェで会ったイ氏は、「映画やドラマ、演劇まで、60年以上、忙しくしているのが習慣になった」と言って笑った。
この映画では、両親のいない孫の世話をする期限付きの祖父に扮し、観客の涙腺を刺激する。久しぶりの主演だ。「大学で芝居をした時、60歳の労役から始めました。主人公であれ脇役であれ最善を尽せばいいこと。久しぶりに重要な役なのでわくわくした。いい役なので上手くやらなければと欲も出てきた(笑い)」。
撮影現場で鼻血が出るほど演技をしたが、そんな素振りも見せなかったという。強行軍が続くドラマの撮影の時も、後輩と同じように夜を徹して撮影する。
「鼻血ぐらいは仕事をしてみると出ることもある。一緒に作業する後輩やスタッフに迷惑をかけてはいけない。年だと配慮されることを期待していては、いつ抜けるかもわからず、ささいな基本から守りたい」
長い演技人生ゆえか。俳優とはどんな劇であれ「存在の意味」がなければならないというのが彼の持論だ。なので役の軽重も無意味ということだ。「ただワンカットだけでもその俳優の演技、そのシーンが劇で意味あるならそれでいい」。
年齢ゆえ、すべての作品を最後と思って臨むという悲壮な話も付け加えた。「最初から苦しいことは覚悟したので、演技人生に悔いはない。やったことのないジャンルもない。今後もっと忙しく演じていくつもりだ。演技の時ほどやりがいが感じられる時はない」。
張善熙 sun10@donga.com