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[オピニオン]名前を失った就活生

Posted June. 21, 2017 08:32,   

Updated June. 21, 2017 08:51

한국어

「3番さん、修正テープ貸してください」。一日に14時間ずつ、数ヶ月間同じ教室にいても、お互いの名前を知らない。ただ学院から付与された番号のみで呼んだり呼ばれたりするだけだ。最近、就職のため、TOEIC試験を準備する寄宿塾の風景だ。理由はただ一つ。互い名乗り合うと、「知り合い」になる。境遇が似ているので簡単に共感して付き合うこともできる。結局、TOEICの点数が落ちれば、自分だけが損をする。「名前の呼び合い禁止」は、長期間、学生たちを教えながら体得した学園の教師らのコツだ。

◆「○番フクロウ、渡河準備終わり」。軍隊に務めたことのある男なら何度か叫んだことのある掛け声だ。遊撃訓練場に入ると、階級と名前の代わりに、ヘルメットに書かれた番号で呼ばれる。フクロウは、米国の特攻訓練を初めて受けた陸軍士官学校の生徒らによって命名された。勇敢で機敏なうえ、韓半島のどこにも生息することを考慮したという。刑務所の囚人も番号のみで呼ばれる。400万人を虐殺したナチス統治下のアウシュビッツ収容所は、収監番号を体に強制的に入れ墨した。

◆遊撃訓練場で番号のみで呼ぶことは、階級の低い訓練調教が階級の高い対象者を遠慮なく訓練させるためだ。刑務所で番号で呼ぶのは、受刑者の匿名性保護のということもあるが、効率的な統制管理のためでもある。名前の代わりに番号で呼ぶのは、相手の人格を認めないという意味になりかねない。昨年、「共に民主党」の議員らが学校の授業時間に、教師が生徒の名前の代わりに番号で呼べないようにする法案を提出したことも、生徒の人格権侵害を防ごうという趣旨からだった。

◆京畿軍浦(キョンギ・グンポ)のTOEIC寄宿塾の塾生らは4年以上も、1人もこの規定を破らなかったという。それだけ就職が切羽詰まっていたためだろう。400点台の学生らのTOEIC点数は、通常3ヶ月間で700点台に向上されたという。今年4月、韓国の青年失業率は11.2%で、経済協力開発機構(OECD)35加盟国のうち、増加幅が最も急激だった。体感失業率は先月末で22.9%で、青年4、5人に1人が失業状態だ。恋愛も名前も忘れたまま、就職準備だけにこだわる韓国の青年たちが気の毒だ。

河宗大(ハ・ジョンデ)論説委員orionha@donga.com