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金東里の「息子」

Posted February. 25, 2017 10:08,   

Updated February. 25, 2017 10:10

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韓国戦争前の出来事だ。「郷愁」の詩人「鄭芝溶(チョン・ジヨン)」が、肉一斤を買って、ソウル恵化洞(ヘファドン)に住む金東里(キム・ドンリ)を訪れた。酒の肴として肉入りチゲを待っていても、なかなか出てこなかったので、鄭芝溶がトイレに行く途中覗いてみたら、金東里の妻が台所で肉をただ見ているだけだった。「なぜ、そうしているのか」と聞くと、帰ってきた答えは、「肉入りのお惣菜を食べたのがいつだったか分からないほど昔だったので、料理の仕方が分からない」だった。鄭芝溶は金東里に、「これほど貧しいとは思わなかった。なのに、まだ社会主義者になっていないのか」と話した。

◆金東里は最初は詩でスタートしたが、間もなく小説に転じた。禅やシャーマニズムなど、東洋的世界を突き詰めた「巫女圖(ムニョド) 」や「乙火(ウルファ)」、「等身佛(ドゥンシンブル)」などの名作を残した。日本植民地時代末期には絶筆して親日を拒否し、独立政局では、社会主義系列「文学同盟」に対抗して、「朝鮮青年文学協会」を率いた。東洋哲学者だった長兄「キム・ボムブ」から、「乱世にはきちんとどちらかの一方に加わりなさい」と勧めてられて、右翼を選んだというエピソードもある。

◆22日、憲法裁判所で姜日源(カン・イルウォン)裁判官に向かって、「そうしたら、国会側の首席代理人になる」などの暴言を吐き出した金平祐(キム・ピョンウ)弁護士は、金東里の次男だ。朴槿恵(パク・グンヘ)大統領の代理人団に後で加わって攻勢を主導している。彼は、「弾劾を弾劾する」というタイトルの本を出版して、メディアが崔順実(チェ、スンシル)国政介入事態を事実として追い詰め、国会で弾劾案が可決される「12・9政変」が起きたと主張している。父親である金東里を誇りに思っているという氏は、「今は七十を超えているので、怖いものなどない」と語ったこともある。

◆「冠村隨筆」の作家「李文九(イ・ムング)は、金東里の「文学的息子」といえる。左翼活動で家がばらばらになると、生き残るために「金東里のひざ元」に入ると決心した。金東里は、李文九を受け入れて30年間、身元保証人の役割を厭わなかった。金東里を意識した司法当局は、李文九が憎くても手を付けることができなかったし、李文九は、左右に分かれた文壇の和合のために身を投げた。2003年、氏の葬儀を民族文学作家会議、国際ペンクラブ、韓国文人協会の3団体が一緒に執り行ったのは、文壇史上未曾有のことだった。