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[オピニオン]毒薬の進化

Posted February. 22, 2017 07:40,   

Updated February. 22, 2017 08:27

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歴史上最も有名な毒殺者はローマ帝国のネロ皇帝の母親アグリッピナではないだろうか。夫を毒殺したアグリッピナは、息子を皇帝にしたい野望から障害になる人をすべて除去した。叔父のクラウディウス皇帝と結婚しようと皇后を殺し、皇帝の実の息子のブリタンニクスを毒殺し、後にクラウディウスまで毒殺した。アグリッピナが使った毒薬はヒ素。少し甘みがあるヒ素は料理に混ぜやすく少量では死なないため、少しずつ飲ませて自然死に見せかけるのにいい。ヒ素は王を殺す死薬の主成分でもあった。

◆イラクのフセイン元大統領も、政敵や反対者を除去するのに毒を使った。国家安全保障の責任者だった時代には、宗教指導者や数十人の国外反体制者を毒殺したが、フセイン元大統領が愛用した毒は硫酸タリウムだった。タリウムは水によく溶けて何の味もせず、致死量を飲めば症状は時間を置いてあらわれる。ロシアは放射性物質まで使う。2006年、英国で腹痛を訴えて死亡した元ロシア秘密警察の尿から「ポロニウム210」が検出された。

◆毒殺が別の他殺と異なる点は、自然死への偽装が可能ということだ。過去に毒薬は手に入れることも容易だったし、料理や飲み物にそっと混ぜるだけでいいだけでなく、ひとまず体の中に入れば証拠を見つけることは難しく、殺人行為を隠すことができる。毒薬のまたの名が「殺人者の友」である理由だ。これまで多くの人が毒殺されたが、これを立証することは困難だった。しかし、毒殺の時代は終わる。現在は一般人が毒薬を手に入れることも難しく、検死で簡単に明らかになる。

◆マレーシアで暗殺された金正男(キム・ジョンナム)氏を見ると、彼は毒物襲撃を受けた後も空港の案内センターに歩いていき、空港職員について医務室に行くなど2分30秒ほどしっかりと意識があった。襲撃されてから死亡まで30分かかり、検死の結果、まだ薬品は発見されていない。北朝鮮側は、旅券名の「キム・チョル」が自然死したと主張する。金正男氏を殺害したものが、時間を置いて作動し、体内に成分が残らない新種の毒性物質である可能性が指摘されている。進化する毒薬は科学文明の暗い影のようで苦々しい。

鄭星姫(チョン・ソンヒ)論説委員shchung@donga.com



정성희기자 チョン・ソンヒ記者 shchung@donga.com