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わが時代の偉人伝

Posted February. 21, 2017 08:55,   

Updated February. 21, 2017 08:55

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米初代大統領であるジョージ・ワシントンの有名なエピソードだ。6歳の時、斧を持って遊んで、父が大事にしていた桜の木を切った。誰がそうしたのかという怒号に、幼いワシントンは、自分がやったと正直に話した。正直さの重要性を強調する子供向け「ワシントン伝記」には欠かせない内容だが、実は伝記作家「パーソン・ウィームズ」の作り話だ。1800年、彼が発売した最初のワシントン伝記には、この内容が含まれていない。6年後、彼は5刷を印刷する際、桜の木の話を入れて「神話創造」に貢献した。

◆画家「金炳宗(キム・ビョンジョン)」氏は、「戦後の廃墟の中で生まれた私たちの世代を育てたのは、その8割が偉人伝ではないかと思う」と書いた。子供の頃、目が覚めたら枕元には、父が置いた偉人伝があったという。画家の父親は偉人伝で、無言の教えを伝えたのだ。その頃、経済事情のよかった家なら、親たちが購入した韓国と世界の偉人全集が本棚にあった。出版社は違っても、そのリストは似通っていた。国内版では李舜臣(イ・スンシン)や世宗(セジョン)大王、世界版は、リンカーンやエジソンなどが常連だった。

◆大韓民国が豊かになったことで、偉人伝の読書ブームは徐々に姿を消した。その空席を芸能人やスポーツ選手、ビジネスマンなど、我が時代の著名人たちの成功物語が埋めている。1982年の小中学生対象のアンケートで、最も多く読んだ偉人伝の1〜5位は、李舜臣や世宗大王、エジソン、キュリー夫人、申師任堂(シンサイムダン)の順だった。一方、2016年、教保(キョボ)文庫の児童偉人伝の販売順位は、首位が劉在錫(ユ・ジェソク)、3位がリオネル・メッシ、4位は 金姸兒(キム・ヨナ)、6位は朴智星(パク・チソン)、7位はウサイン・ボルト、10位は柳賢振(リュ・ヒョンジン)だった。李舜臣は8位、世宗大王は11位にとどまった。

◆戦後世代の親たちが、偉人伝を通して適切な人格涵養を図ったなら、最近は、進路を探るために活用されているような気がする。偉人伝では、ある程度の誇張や美化は避けられない。特に生存人物の場合は、残りの人生の中で、いくらでも評価が変わることもありうるというリスクがある。論文操作事件が起きる前に10数種の「黄禹錫(ファン・ウソク)偉人伝」が出版された。朴槿恵(パク・グンヘ)大統領の当選後は、漫画の偉人伝が発売された。本のタイトルは、「信頼のリーダーシップ朴槿恵」だった。