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キツネの教え

Posted February. 27, 2019 07:54,   

Updated February. 27, 2019 07:54

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少し大げさに言えば、童話は子供より大人のためのものだ。アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの「星の王子さま」もそうだ。自分の星を離れて地球に来て、大きな悟りを得て帰る王子の物語はいつ読んでも深い響きを与える。その中核にある王子とキツネのエピソードは、特にそうだ。

幼い王子が、地球のとある草地に倒れてしゃくりあげている。彼が泣く理由は、自分が愛するバラの花は、彼が住んでいる星にだけあると思っていたが、地球に来てみると、似ている花が多すぎて裏切りと絶望感を感じたからだ。自分はこの世にたった一つしかない花を持つ金持ちだと思っていたが、そうではなかったのだ。通りかかった見知らぬキツネがそのような理由で悲しむ王子を見て、違う方向で考えてみろと勧める。本当に重要なものは表に現れないので、心の目で見てこそ見えると言いながら。

最初は、王子ときつねもお互いに他の子供たちやキツネと似たような存在に見えるが、お互いについて知ると、世界で唯一無二の存在になれるという論理だ。実際にキツネと王子は、お互いについて知り、関係を深めながら、最終的には別れに胸を痛める間柄になる。互いに過ごした時間がそうしたのだ。キツネは王子にこのように語れるようになる。「バラをあれだけ大切にしたのは、あなたがあなたのバラのために注ぎ込んだ時間だよ」。その経験を通じて、王子は自分の星に住んでいるバラの花は、世界で唯一無二の存在であり、本当に重要なことは、目に見えないという事実を悟って自分の星に戻る。

近くにいる人が、ほかに大勢いる人の一人ではなく、私たちが無限責任を負うべき、この世に一つしかない貴重な存在であることを忘れて、たまに自分も知らないうちに、その人を傷つけながら生きていくという点で、私たちは少しずつ自己中心的な星の王子さまに似ている。だから地球に来る時よりも、地球を去ったときの賢い王子に似なければならないということ、これがサン=テグジュペリの童話が私たちに与える教訓だ。