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穏やかさの力

Posted January. 16, 2019 09:05,   

Updated January. 16, 2019 09:05

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あるフランスの浜辺で突然大きな波が起こった。穏やかだった海が一瞬にして危険な場所に急変した。2人の子どもが危険に直面していた。彼女はその姿を見て海に飛び込んだ。そして荒々しい波に巻きこまれた。子どもたちは助かったが、彼女は死んだ。フランス哲学者、アンヌ・デュフールマンテル氏は、53歳でその生涯を終えた。2017年夏のことだった。

彼女が助けようとした子どもたちは見知らぬ子どもたちだった。それでも彼女は、子どもたちを助けようとした。彼女が強調していた「冒険」と「穏やかさ」に合致する行動だった。彼女は、冒険と穏やかさを理由の中心に置いた哲学者だった。彼女は「生きているということは冒険」と考えた。そして危機的な状況で危険を省みない冒険的な行為が人間が生まれつき持っている穏やかさ、幼年期に属する穏やかさから出ると信じた。

その穏やかさは、私だけを、私の子どもだけを、私の両親、兄弟だけを考える穏やかさではなく、思わず自分を超越して他人に向かって進む穏やかさだった。ならば、彼女が命をかけて助けようとした子どもたちは、彼女と関係がないのではなく、関係がある子どもたちだった。すべての子どもが穏やかさの秘密を抱く存在ではないか。穏やかさの哲学者は、子どもたちを助けようと海に飛び込んだ。

穏やかさは彼女にとって力だった。『穏やかさの力(Power of Gentleness)』という題名の、著書の英訳本の表紙にあるウラジミール・ポカノフの絵「牛を担ぐ少女」が象徴的に示すように、穏やかさは人生の危険と重さに耐えるようにする力だった。穏やかさが力でないなら、少女が自分より何倍も大きく重い牛をどうやって肩にのせることができるだろうか。彼女は、巨大談論に執着する哲学者が冷遇する穏やかさという主題で、人間の実存の寂寞さと暴力性に対抗しようとした。彼女はその穏やかさが、マユの中の蝶の羽のように私たちの中にあると言った。その年の夏、彼女は子どもたちに向かってその羽を広げた。



李恩澤 nabi@donga.com