Go to contents

死ぬ前の最後の願い

Posted December. 27, 2018 09:20,   

Updated December. 27, 2018 09:20

한국어

3年前のある夜、死を控えた78歳の女性が、オランダのアムステルダム国立美術館を訪れた。死ぬ前にもう一度見たい絵があったからだ。全身の筋肉が麻痺するALS末期だったその女性は、ベッドに横になったまま絵の前に移された。女性の願いを聞いたとある医療ボランティア団体の助けを借りて実現したことだった。

当時美術館は、17世紀のオランダの黄金期を代表する画家、レンブラントの特別展を開いていて、女性が死ぬ前に必ず見たかった作品は、レンブラントの末期の肖像画だった。レンブラントは生涯40点あまりの自画像(油絵)を残した。注文者の好き嫌いを考慮する必要のない自画像は、美術的探求と同時に画家自身の外見と内面を探求する最良の題材だった。彼は20代は普通の若者として、30代は優雅な貴族のように、50代は使徒パウロの姿に自分を描いた。末期の自画像であるこの絵は、画家としてのアイデンティティを含んでいるが、彼が63歳で死ぬときまで完成できなかった。手の部分は描かれなかったが、左手は筆とパレットを握っていて、右手は腰に向かって下を向いている。白い作業帽子をかぶって、毛皮マントを羽織っているので、絵が描かれた時期は冬であることが分かる。背景にある謎の2つの円は、さまざまな解釈を生む。コンパスなしで円を完全に描くことができる画家としての力量を現したものかもしれないし、彼が生涯追求した光と闇の世界の象徴か、はたまた生と死の世界を意味するのかもしれない。

若い頃、画家として富と名誉を全て持っていたレンブラントも、晩年はひどい貧困に苦しみ、妻と子を失う悲しみを経験しなければならなかった。しかし、絵筆を握った老画家は、むしろ平安で幸せそうに見える。人生の道理を悟った賢者の姿のようでもある。末期患者の女性は、絵の中の画家の姿から、最後の人生の慰めと平安を求めたのだろうか?この絵の前で非常に幸せだったという。死ぬ直前にたった一日の時間が与えられるのなら、あなたは何を望むのか。

美術評論家