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権力に向かう忠誠

Posted December. 20, 2018 08:22,   

Updated December. 20, 2018 08:22

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適当な金は安楽を与えるが、莫大な金は権力を与える。銀行業で莫大な富を築いたメディチ家は15、16世紀、フィレンツェ共和国の最高の権力者だった。代々芸術を後援したこの一族は、フィレンツェにルネサンス芸術が花咲くうえで決定的な役割を果たした。同時代の権力者の好みを作品にうまく反映したサンドロ・ボッティチェリは、メディチ家の寵愛と後援を一身に受けた画家だった。「東方三博士の礼拝」は、ボッティチェリに名声を与えた初の作品で、東方三博士の三人がイエスの誕生を祝いに駆けつけた聖書のシーンを描いている。30代になったばかりとも思えないほど卓越した構成と生き生きした色彩、人物の写実的表現が優れた秀作だ。

しかし詳しく見ると、絵が少しおかしい。イエスが生まれた場所は馬小屋ではなく廃虚になった古代の建築物で、東方三博士をはじめ登場人物の服装もイエスの時代のものではなく、15世紀の華やかなフィレンツェの衣装だ。そのうえ、東方三博士の顔は当時良く知られたメディチ家の人々だ。白髪に黒い服を着てイエスの前に座るのはフィレンツェの支配者だったコジモ、真ん中に座る赤いマントを着た人は彼の息子のピエロ、その隣は息子のジョバンニ。絵が描かれた当時、東方三博士と称された彼らは皆死亡し、コジモの孫のロレンツィオが権力者だった。彼は、絵の一番左の赤い上着を着た若い騎士で登場する。では、この絵はロレンツィオが注文したのか。違う。右の集団の中で自分を指さす男、カスパール・ディ・ラーマだ。両替業で成功した彼は、メディチ家によく見られたいという思いでこの絵を注文したのだった。最高権力者に向かう忠誠心の表現でもあった。

では、絵の右端でこちらを見つめ、このすべての状況を教える黄金色のマントの男は誰なのか。まさにボッティチェリ自身である。彼も後援者だったメディチ家に対する忠誠心を絵を通じて示している。

美術評論家