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ランボルギーニと「偽物」のロレックス、国情院の不幸を終わらせる道

ランボルギーニと「偽物」のロレックス、国情院の不幸を終わらせる道

Posted November. 05, 2018 08:15,   

Updated November. 05, 2018 08:15

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「お願いがある。私たちは友達ではないか」

「私が必要な時は電話にも出なかったくせに、私は友人とは思っていない」

実話を素材にしたハリウッド映画「ゼロ・ダーク・サーティ」の一シーンだ。米中央情報局(CIA)要員が夜中に、クウェートのナイトクラブで情報源の役割をしていたアラブ人にお願いをしたが断られた。9・11テロ事件の主犯であるオサマ・ビンラディンの隠れ家を追跡していたこの要員は、すぐにランボルギーニ店に行って友情を確認しようと話した。情報源が黄色いモデルを選んだ。40万ドル(約4億4700万ウォン)程度の最高価格だった。この要員は、CIAの関係者を説得してすでに工作費を手にした後だった。

この要員は、車両と一緒に紙片を渡しながら、「電話番号を探してほしい」と話す。ビンラディンの最側近の母親の名前が書かれていた。しばらくして番号を入手したCIAは、通話明細と位置追跡を通じて母親が数ヶ月間6つの異なる電話を使い、同じ携帯電話は2回以上使わないという不審な点を発見した。この手がかりで、CIAは、アフガニスタンのビンラディンの隠れ家を見つけた後、2011年5月に射殺した。

国家情報院の「黒金星」工作員として活動したパク・チェソ氏が、収監中に書いた手記を基に制作した韓国映画「工作」。パク氏が当時の金正日(キム・ジョンイル)北朝鮮国防委員長との最初の面談の実現に決定的な役割をした保衛部の実力者に、ロレックスの時計2点をプレゼントするシーンが出てくる。息子と娘の結婚を控えていたこの実力者が、経済的事情で嫁入り道具の購入がままならない事情をパク氏がつかんだのだ。パク氏は、国家情報院の工作費で立てた会社から本物のような偽物を200万ウォンで購入した。本物は7万ドル(約7800万ウォン)だった。保衛部の実力者は、「共和国の法律が許す限り助けたい」と態度が変わったという。

秘密の戦争を繰り広げる情報機関は、工作費の使途で作戦の成否が分かれることが多い。しかし、検察が今年2月に起訴して裁判中の「対北朝鮮工作費横領事件」を見れば、言葉が詰まる。対北朝鮮工作団長と局長、次長などを務めた国家情報院の幹部が、保守政権時代、対北朝鮮の工作費でソウル市内の最高級ホテルのスイートルームを用意し、国家情報院長に個人的に使わせた事実が明らかになった。工作費の使用明細を国家情報院の基調室に報告しないように、対北朝鮮工作局内部の指針を見直したこともあった。北朝鮮の核と最高位層の情報収集に使用すべきお金をとんでもないところに使ったのだ。

これを防止するための国家情報院法の改正案が、今年1月に国会に提出された。与党「共に民主党」の議員85人が発議した。ここには、これまで国家情報院がしなかった対北朝鮮工作費の支出結果を国会情報委員会に報告しなければならないという条項がある。院長が承認した別途の機密予算執行明細も、情報委員の3分の2以上の要求があれば情報委に報告しなければならない。米国のように議会が情報機関の予算と活動を制御できるようになるだろう。情報機関の権力乱用を防ぎ、政権交代に関係なく情報機関が一貫性のある情報収集活動を行うことができる環境が整えられるといえる。

この改正案を審議する情報委の委員長は野党議員が務める。国家情報院は委縮せざるを得ないだろう。しかし、改正案は10ヶ月間も情報委に上程されずにいる。野党はスパイ関連捜査の弱体化は気にしながらも、改正案には関心がない。

「かつて議員たちは、国家情報と関連した問題については、知らないほど良いと語った…。今はあまり知らないことより、もっと多く知るための努力、そして危険を甘受する必要がある時だ」。米国で議会のCIA統制権を強化するための議論が最初に始まった1970年代半ばに、とある野党指導者が口にした言葉だ。国家情報院の繰り返される不幸を終わらせるためにも、韓国国会がより多くのことを知る負担を抱え込まなければならない時がきた。


鄭元洙 needjung@donga.com