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「恐怖のトランプ」

Posted September. 07, 2018 08:25,   

Updated September. 07, 2018 08:25

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「真の権力は恐怖だ(Real power is fear)」。韓非子やマキャヴェッリが語ったとしてもおかしくないこの言葉を、トランプ米大統領がウォーターゲート事件の取材記者であるワシントンポストのボブ・ウッドワード副編集者とのインタビューで口にした。その文章の「恐怖」という単語が、ウッドワードが最近出した新刊のタイトルになった。

◆中国映画「英雄」を見ると、始皇帝が暗殺者の荊軻に追われている中でも、近衛兵たちが命令がないために壇上に上がることができず、宮殿の下で不動の姿勢で立っているシーンがある。秦の始皇帝の命令に従わなかったときの恐怖がどの程度のものだったか推測できる。それほどではないが、トランプ政権の高官が5日、米紙ニューヨークタイムズに、自分をトランプに対抗する「レジスタンス」と紹介して寄稿した匿名のコラムの中でトランプ政権を告発する不思議なことが起こった。

◆新刊「恐怖」には、ホワイトハウスのゲイリー・コーン国家経済委員長が、トランプ氏が韓米自由貿易協定(FTA)を廃棄するために署名しようとしていた書簡を大統領の机からこっそり持ち出しても大統領は書簡がなくなったことに気付かなかったと書いている。韓米FTAを廃棄しようとしたこと自体よりも、国を揺さぶりかねない考えが、スーパーパワーである米大統領の頭の中に衝動的に起こっては忘れられたということのほうがより衝撃的だ。恐怖というのは、単に怖いからというよりは、予測不可能なことから始まったりもする。

◆しかし、狂人(maddman)のように右往左往する選択が、意図されたものである時もある。トランプ氏は対北朝鮮への先制攻撃を準備するように指示していながら、一瞬にして開き直って金正恩(キム・ジョンウン)を褒め立てて交渉したりする。トランプ氏の著書「交渉の技術」を見ると、相手に自分は1つのオプションにすがりつかず、相反するオプションを同時に追求できることを示すことが重要だ。ウッドワードであれば、恐喝や交渉を並行して利益を得た元不動産開発業者の戦略を誰よりもよく知っているはずなのに、知らなかったふりをした側面がなくはない。ワシントンポストは、大統領選挙当時、記者20人でトランプ検証チームを立ち上げたが、そのチーム長がウッドワードだった。ウッドワードの新刊出版は、中間選挙を二ヶ月後に控えた時点で、トランプ氏と同紙とのもう一つの勝負といえる。


ソン・ピョンイン論説委員 pisong@donga.com