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独裁者の末路

Posted November. 17, 2017 08:39,   

Updated November. 17, 2017 09:23

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環境部は最近、慶尚北道英陽(キョンサンブクド・ヨンヤン)に造成している風力発電団地に対して、工事中止命令を下した。業者がこの一帯の19万平方メートルに、風力発電機22基を建設し始めてから1年半ぶりのことだ。理由は、工事現場周辺に天然記念物であり、絶滅危惧種であるワシミミズク一家が住んでいるという。大統領府が千聖山(チョンソンサン)トンネルの工事中止命令を下したことはあるが、環境部が自主的に工事中止命令を下したのは初めてだ。

2004年当時、市民社会首席秘書官だった文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、千聖山に生息するサンショウウオを保護すべきだと主張し、大統領府前で断食をしていたチユル和尚を訪ねて、「2審の結果が出るまで工事を中断する」と約束し、実際、工事は中止となった。サンショウウオ議論の虚しい結末を蘇らせることではない。英陽風力団地は、ワシミミズクのほか、森林破壊や地滑りの危険など、複数の問題を生み出しており、工事中止は避けられなかったと思う。注目すべき理由は、今回の措置が脱原発に拍車をかけている政府が代案として提示する再生可能エネルギー事業の不安な将来を示しているからだ。

英陽は山が多く、風が激しい地形を機会に活用して、全国最大の風車村を夢見ている。しかし、59基の発電機が回転しているここで、多くの住民がブレード(翼)の回る騒音と低周波による睡眠障害、農作物や家畜被害を訴えている。慶北青松老萊山(チョンソン・ノレサン)など、風力団地が建設されているところでは、このようないざこざが起きなかったところは1カ所もない。

風力発電は、風の質が重要なので、建てたくてもどこにでも建てられるというわけではなく、山の稜線に沿って建設されるため、ある程度の森林破壊は避けられない。興味深いのは、脱原発と再生可能エネルギーの拡大を主張する環境団体が、風力発電に反対するという点である。環境団体は、「孟冬山(メンドンサン)一帯が回復不可能に毀損されたし、住民は騒音と低周波、送電塔により苦しんでいる」と工事の中止を求めている。「地球的に考えて、地域で行動せよ」は、環境団体の長年のモットーだが、地球的には風力に賛成しながら、地域的には反対するしかないというジレンマに環境団体が落ちたのだ。ある種の環境団体版の「ニムビ(NIMBY)」といえる。

立地不足や住民反対のために、最近は洋上風力が浮上しているが、海の生態系破壊、渡り鳥への影響、漁民の反対など、突破しなければならない難関が幾重にも重なっている。ここでも環境保護団体は、間違いなく登場する。済州(チェジュ)海上風力地球が指定されると、環境団体「ホットピンクドルフィンズ」は、「洋上風力がイルカの生息地を破壊する」と反対した。

太陽光発電の設立条件も暗澹たるのは同じだ。靈光(ヨングァン)原発と靈光ソーラーパークを比較した資料によると、同じ発電量を作り出すのに、太陽光団地は原発より540倍もの敷地がさらに必要である。ソウル全体を太陽光パネルで覆っても、靈光原発6基の発電量を得ることができない。山地の多い韓国で、平らな敷地を確保するためには、木を切るしかなく、そのため森林保護団体が反発する。環境を保護するための方法が、別の環境を破壊する現象を巡って、ライアン・ヨンク米ユタ州州立大学教授は、グリーンの敵はグリーンになっていると指摘する。

再生可能エネルギーは、人類が到達しなければならない究極のエネルギーである。文在寅(ムン・ジェイン大統領は現在1.9%である再生可能エネルギーの割合を2030年までに20%までに増やすと約束した。しかし、ワシミミズクが風力を停止させたところからもわかるように、再生可能エネルギーの拡大は、脱原発よりさらに難しいかもしれない。環境保護において衝突する価値をどのように調整するか、政府の悩みが深まるばかりである。