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ナッジと介入主義

Posted October. 11, 2017 09:38,   

Updated October. 11, 2017 09:40

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英国政府が毎年道路脇から収集するゴミは20万袋、7500トンに達する。環境保護団体「クリーンアップブリテン」は、どのキャンペーンも効果がなかったため、2015年6月、行動経済学者たちに支援を求めた。学者たちは、ゴミの投棄は、誰も自分のことを知らないだろうと信じているから犯す無意識行動だという点に注目した。そこから考案された解決策が、ファーストフード店に対して、包装紙の外側に購入者の名前を書くように勧告することだった。匿名性というカーテンを取り払って、責任感を表す実験が現在行われている。

◆飛行機の離陸直前に機長が「墜落の可能性は極めて低い」と放送すれば、その瞬間から人々は恐怖に震えるだろう。行動経済学は、このように人間は直観に頼る非合理的で消極的な存在だとみなす。狂牛病(BSE)騒ぎのような不合理な恐怖が簡単に広がったり、インターネットショッピングサイトに加入しながら、広告受信拒否の項目をクリックする手間を面倒がったため、迷惑メールに悩まされたりする理由だ。

◆米シカゴ大学のリチャード・セイラー教授は、政府のひそやかな介入を通して、直観的で怠惰な人々を前向きな方向に誘導できると、8年前の著書「ナッジ(Nudge=そっと刺す)」で明らかにした。行動経済学を現実に取り入れたセイラー氏の取り組みは、9日、ノーベル経済学賞で報われた。★ナッジの効果として多く引用されていることが、アムステルダム空港にある男子トイレの便器だ。便器の中央に黒いハエを描き入れたら、便器の外に跳ねる尿の量が80%も減少した。

◆「介入主義」を強調するナッジは、大きな政府を掲げる進歩派政権に合致する概念である。先の保守派政権もナッジと規制改革を組み合わせようとして失敗した。何よりもナッジは複雑な懸案について、悩んでばかりいる大衆の代わりに、政府が答えを選んで提供できるという哲学を持っている。しかし、ナッジも乱用してはならない。一例として、臓器提供を拒否しなければ、提供に同意したとみなされては困る。ナッジの共同著者であるキャス・サンスティーンも、ナッジの続編である「Simpler」に強い警告を込めた。「政府は、自らの立場を固めるために投票の基本的ルールを悪用してはならない」。

洪守鏞(ホン・スヨン)論説委員