◆個体としてのアリは軟弱だが、群集としてのアリは恐ろしい。アリが強いのは、徹底的な階級社会、分業社会であるからだ。フランスの作家「ベルナール・ウェルベル」が小説「蟻」を通じて示したように、アリは巣を作り、食べ物を集めて貯蔵し、子を育て、戦闘を行うすべてのことが分業化されており、フェロモンで高度のコミュニケーションを取る。アリ一匹にフェロモンのにおいをなくすオレイン酸を塗ると、他のアリたちはこの蟻を食料や敵に誤認して殺したり攻撃したりする。
◆強い毒性を持つヒアリは、南米から米国と日本を経て韓国まで来たから、どれほど生存力が強いのか推測が可能である。先月28日、釜山(プサン)港で発見されて以来、秋夕(チュソク、陰暦8月15日の節句)連休を恐怖に追い込んだ殺人アリの騒ぎは、その翌日、政府が1000匹が生息する蟻の巣を見つけて破壊したことで一段落したが、安心できるものではない。ヒアリの流入が初めてだという保証もない上、破壊した蟻の巣が唯一のアリの巣だという根拠もない。アリがアスファルトを突き抜けてきたことから見て、道路に乗って他の場所に移動した可能性もなくはない。
◆女王アリは、生涯数千~数十万匹の卵を産んで、強力なフェロモンを発散するアリ帝国の支配者だ。働きアリ、兵隊アリをいくら除去しても、女王アリを殺さなければ効果がない。洪水が起きた時も、ヒアリは女王アリを中心に球を作って、水に浮いて耐える。当局は、防疫過程で「女王アリは死んだ可能性が極めて大きい」と主張しているが、それは分からない。行方の分からない女王アリに懸賞金でもかけなければならないのだろうか。