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[オピニオン]お金と悪名との対決が残したもの

[オピニオン]お金と悪名との対決が残したもの

Posted August. 29, 2017 09:36,   

Updated August. 29, 2017 09:54

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「作文は何でもない。ボクシングが全てだ」。ノーベル文学賞を受賞した米国の小説家「アーネスト・ヘミングウェイ」が残した言葉だ。ボクシングがあまりにも好きで、書くことよりボクシングのほうに投入した時間のほうが多いだろうと言う話が出てくるほどだ。1920年代のパリ滞在時は他の作家と定期的にスパーリングをし、その時、「グレートギャツビー」の作家スコット・フィッツジェラルドは試合の時間を計る役割をした。

◆プロボクシング中継放送を見ることが大きな楽しみだった時代があった。1977年、WBAジュニアフェザー級世界チャンピオンの試合で、4転び5起きの神話を残した洪秀煥(ホン・スファン)選手の試合に全国民が熱狂した。当日、27回も再放送されたというから、これ以上の説明などいらないだろう。その後も、張正九(チャン・ジョング)、柳濟斗(ユ・ジェドゥ)、柳明佑(ユ・ミョンウ)など、プロボクシング大国の威信を立てた名前が中高年世代の記憶一角に残っている。貧しい環境を乗り越えたボクシングの英雄たちは当時、「ハングリー精神」を子供たちに注入するのにも適当なモデルになった。

◆プロ野球やサッカーに押されたボクシングへの関心が、つかの間よみがえった。27日、米ラスベガスで開催されたフロイド・メイウェザー・ジュニアとコナーマクレガーの試合の視聴率が同時間帯首位(12.9%)で、大ヒットを記録した。韓国だけでなく、世界が注目した「世紀の対決」のおかげで、二人の選手共に大金を手にした。10ラウンドの試合時間を総収入で割ると、メイウェザーは1秒間に2億ウォン、マクレガーは6700万ウォンを手にしたという。

◆ともすれば、テーブル上にドルの札束を敷いたお金の自慢写真をソーシャルネットワークサービス(SNS)に掲載するメイウェザーのニックネームは「マネー(money=お金)」、格闘技界の悪童であるマクレガーのニックネームは「ノトリオス」(notorious=悪名高い)である。格闘技選手に勝って「50戦全勝」の記録を立てたメイウェザーに対して、ボクシングの恥だといううわさが飛び交っている。生まれて初めてボクシングの試合に出てきたマクレガーは、計170回のパンチに打たれたが、莫大なパンチの対価とともに、ハリウッドからラブコールを受けるなど、ギャラが高騰した。ボクシングを「自分との戦い」「体で勝負する正直な運動」として眺めていたロマンの時代は幕を閉じた。今、正方形のリングは、天文学的金が踊るエンターテイメント舞台に転落したような気がする。

高美錫(コ・ミソク)論説委員mskoh119@donga.com