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[オピニオン]「金正恩貿易商社」の通貨危機

[オピニオン]「金正恩貿易商社」の通貨危機

Posted August. 28, 2017 09:25,   

Updated August. 28, 2017 09:29

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「お前たち、開城(ケソン)工業団地で服を作ったエミナイ(若い女性を意味する北朝鮮のなまり)たちを早く集めなさい。今ドルを稼ぐ道はそれしかないから」

昨年2月に工業団地の閉鎖後、「資本主義の黄色い風にさらされた」というレッテルが張られて、北朝鮮の全域に散らばった開城工業団地の女工たちは、今北朝鮮朝鮮労働党と人民軍などの権力機関から「ラブコール」を受けているかもしれない。5日、国連安全保障理事会が可決させた対北朝鮮制裁決議案第2371号では北朝鮮のすべての鉱物や水産物輸出を禁止し、北朝鮮権力機関の外貨獲得がすべて食い止められ、やっと織物や賃加工程が残ったからである。

香港紙サウスチャイナ・モーニングポストによると、今年第2四半期(4~6月)に北朝鮮が中国向けに輸出した物品額は3億8520万ドルだった。このうち、衣類が1億4750万ドルで、38%を占めた。6800万ドルだった水産物輸出は今回の決議案により禁止され、石炭輸出は、統計上ではすでに第2四半期から中止となっている。国際社会の制裁網が強まるほど、合法的衣服輸出への依存度はさらに大きくなるだろう。経験豊富な紡織労働者がさらに必要で、開城工業団地の女工たちが金正恩(キム・ジョンウン)体制への脅威勢力なのかどうかを突き詰める状況ではないといえる。

北朝鮮独特の「首領経済」の構造を少しでも理解すれば、最近、「通貨危機」で緊急事態に陥っている北朝鮮権力部の状況を容易に想像できる。生前、金正日(キム・ジョンイル)総書記が構築した首領とエリートの「互恵と上納」関係をいう。金正日は言うことをよく聞く党と軍幹部らに、鉱山と海の漁場で鉱物や水産物を採取して、中国などに輸出する権限(専門用語では「ワク」)を与える。エリートたちはこうようにして稼いだドルの一部を金正日に上納し、残りは自分の組織を運営するのに使う。金正日の機嫌を損なうことになれば、ワクを奪われるので、絶対忠誠せざるを得ない。

金正日はこのように調達したドルで核とミサイルを作り、贈り物政治で他のエリートたちを管理した。息子の金正恩も政権に就いて以来、父親の「首領経済帳簿」を真っ先に手にしたことは明らかである。2011年に粛清された李英浩(イ・ヨンホ)人民軍総参謀長と2013年死刑となった張成沢(チャン・ソンテク)労働党行政部長も、実は「金正日が授与したワク」の一部を隠して、ドルを着服しようとしたためにとんだ目にあったという解釈もある。叔父を殺すのに十分なほど、「ドル金脈」が重要だったのだ。

北朝鮮経済専門家たちは、今回の安保理決議案は、過去の制裁と質的に異なると評価する。ドルをやり取りしてこそ維持される最高指導者とエリートの浅薄な関係を実質的にかく乱できるからだ。北朝鮮経済のドル化(dollarization)現象を看破した米国と国際社会は、今年初め、世界のすべての銀行を通じた北朝鮮のドル取引まで閉鎖した。中国は企業の北朝鮮向け投資も食い止めた。

ソウル大学経済学部の金炳椽(キム・ビョンヨン)教授は、「金正恩が執権した2011年以降、北朝鮮経済の対外依存度は50%を超えており、これに密貿易を合わせると韓国の70%より高い場合もある」とし、「特に対外経済が内部市場化と相まっており、今回の制裁効果は、過去より大きいだろう」と強調した。

だから最近、ドル取引の裏道を見つけるために必死になっている北朝鮮指導部の姿は凄絶なほどだ。先週、米連邦検察による中国とシンガポール企業からの1100万ドル没収訴状で明らかになった中国とシンガポール企業などを通じたマネーロンダリングと物々交換方式が代表的である。相手企業が求める「リスクプレミアム」のため、北朝鮮が支払わなければならない取引コストはさらに膨らんでいる。開城工業団地の女工を探している党と軍幹部は、心の中では不満の声を漏らしているはずだ。

「若大将!『首領決死擁護』もドルが必要ですよね!早く何とかしてくださいよ!」



申錫昊 kyle@donga.com