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元気の素

Posted August. 17, 2017 10:49,   

Updated August. 17, 2017 11:05

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アニメ映画「黒いゴム靴」は、1960年代末、小学生のキヨンと中学生のキチョル兄弟の貧しくも温かい日常が描かれた。シーズン3の15話は、キヨンが、結婚式に行った母親がカステラを持って帰るのを待って、幼い妹の面倒を見る内容だ。泣く妹をなだめていた時、「元気の素」のびんを発見したキヨン。母親が普段、妹だけにあげていた元気の素を1粒2粒口に入れ、すべて食べてしまう。母親がカステラではなく石けんを持って帰ったのを見てがっかりしたキヨンは、元気の素のびんが空っぽになっているのを見た母親に叱られないように家の外に逃げる。

◆40代後半以上なら、元気の素の香ばしい味とバーベルを持ち上げた商標を覚えているだろう。1954年に販売許可を受けた元気の素は、あの頃のほぼ唯一のビタミンB栄養剤と言える。宣伝文句も「母乳を飲む時から元気の素!発育促進、食欲増進、病気への抵抗力強化」だった。1963年に新たな栄養剤としてビーコムCとアロナミンが登場したが、元気の素の人気は簡単には冷めなかった。おやつになるものがあまりなかった時代、キヨンのようにお菓子だと思った子供も多かったことだろう。

◆食品医薬品安全処が16日、ソウル薬品工業株式会社の元気の素の販売を禁止した。食欲不振や消化不良に効果があることを立証できないという理由だった。しかし、実状は休業状態の同社が関連の資料を提出できなかったためだ。元気の素を製造しなくなって久しい。しかし、別の会社が2015年から販売した健康機能食品「思い出の元気の素」に火の粉が飛んだ。販売禁止になった元気の素と混同した店舗が返品されるなど、被害を受けているという。

◆「黒いゴム靴」では、元気の素を末っ子が一人占めしたが、現実では長男や一人息子が独占するのが大半だった。母親が隠して置いて、将来の大黒柱となる息子だけに与えた。栄養剤まで「選択と集中」方式で与えなければならなかった、貧しかった時代を最近の子供たちがどれだけ理解できるだろうか。私も、母親がたんすの上に隠した元気の素のびんを探しては一握りつかんで食べた思い出がある。触るなと言った母親の言いつけに背いたのだ。お母さん、ごめんなさい!