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「自分より先に」密陽惨事現場で輝いた市民精神

「自分より先に」密陽惨事現場で輝いた市民精神

Posted January. 29, 2018 09:04,   

Updated January. 29, 2018 09:34

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慶尚南道密陽市(キョンサンナムド・ミルヤンシ)にあるセジョン病院で最初に火がついた1階の緊急治療室には、最後まで当直医が残っていた。医師は、消火器を噴射しながら死亡するまで、火を消し止めようとしたが、火魔を避けることができなかった。他の病院に勤務しながら、アルバイトで当直をしていたが、患者を置いて抜け出せなかった。5階の認知症高齢者病棟はややもすると、さらに大きな「惨事」に見舞われるところだったが、死亡者は出なかった。療養管理士が高齢者たちにタオルを配って口を防ぐようにした後、順番に避難させて奇跡を作った。彼は煙を吸いすぎて、救助直後に入院した。38人が死亡し、151人が負傷した惨事だったが、患者の命に先に気を配った医療スタッフの殺身成仁によって、それでも人命被害を減らすことができた。

危機の瞬間に助け合いながら救助活動を行った密陽市民の活躍も光を放った。病院の周辺にはきつい臭いとけむたい煙が立ち込めていた。しかし、窓から「助けてくれ」と手を振る患者を目撃した市民は足をとめた。彼らは、消防隊員を助けて消防スライドをつかみ、降りてくる患者たちを安全な場所に避難させた。氷点下10度の厳しい寒さに薄い患者服だけを着た患者たちに、自分のコートを脱いで着せてあげたりした。近所の住民たちは布団とホットパックを持って出てきた。火災のニュースに急いで駆けつけてきた保護者たちも救助現場に飛び込んだ。一人の手でもさらに必要なとき、市民たちが真っ先に走ってきて救助に力を加えた。

遺体安置所を設けるスペースが20数か所しかない小都市で起きた大惨事で、密陽は都市全体が悲しみに沈んでいる。忠清北道堤川市(チュンチョンブクド・ジェチョンシ)で起きたスポーツセンターの火災から一カ月あまりで起きた惨事を見守る国民も悲しみに包まれている。今回も開かれていた防火扉、アクセスが困難な非常口など、大型火災のたびに指摘されてきたずさんな安全管理の二の舞だという無力感さえある。こんな中、自分の場で最後の瞬間まで最善を尽くした医療スタッフや隣人を自分の家族のようにケアした市民が一筋の光に感じられる。彼らの崇高な市民精神こそ、社会を支えている強固な土台といえる。痛みと危機の中で発揮された頑丈な共同体意識が、「安全な大韓民国」への道を開く鍵となるだろう。