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[社説]日本の上空を通過した北朝鮮のミサイルに「安保不安」を露呈した3時間

[社説]日本の上空を通過した北朝鮮のミサイルに「安保不安」を露呈した3時間

Posted August. 30, 2017 09:37,   

Updated August. 30, 2017 09:44

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北朝鮮が29日午前、再び中長距離弾道ミサイルを発射した。平壌(ピョンヤン)北部の順安(スンアン)付近から発射されたミサイルは、最高高度が550キロに達し、日本の上空を通過して2700キロ飛行した後、北太平洋の海上に落ちた。「人工衛星」と主張していたロケットではなく兵器化された弾道ミサイルが日本の上空を通過したのは初めて。先週末の短距離弾道ミサイルの発射が韓国を狙った低強度の挑発なら、今回は、韓国、米国、日本を含む国際社会に挑戦する「戦略挑発」だ。

北朝鮮はこれまで高角発射でミサイル能力を誇示してきたが、今回は実戦角度で日本の領空を越えるように発射した。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の執権後、正常角度で発射したミサイルの中で最も遠くに飛んだ。今回の挑発は、「グアムへのミサイル発射」の予行演習の性格が濃厚だ。金委員長は2週間前、「米国の行動をもう少し見守る」と一歩後退したが、国際社会の圧力が強まり、再び挑発サイクルを稼動したと見える。北朝鮮は、今回の大陸間弾道ミサイル(ICBM)だけでなく、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射で緊張を高める可能性が高い。6回目の核実験もいつでも強行できる態勢だ。今後対話局面に入ったとしても、ひとまず「レッドライン」を越えて有利な立場に立つという計算だろう。

韓国政府の初期対応には失望させられた。大統領府は当初、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が国家安全保障会議(NSC)を開くと伝えたが、鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長の主宰に変更し、文大統領が途中参加する予定と伝えた。しかし、文大統領は参加しなかった。そして約3時間後、文大統領は「強力な北朝鮮への報復能力を誇示せよ」と指示した。先週末に発射された短距離発射体を300ミリ放射砲と推定し、2日後に弾道ミサイルと覆して右往左往する姿を見せたのは前日のことだ。

強硬対応の基調が出るまで政府の動きには緊迫感は見られなかった。鄭室長主宰のNSCは、強力に非難するという儀礼的な声明を出しただけだった。韓米合同参謀議長と外相間の、大統領府とホワイトハウスの安保指令塔間の電話会談が行われたが、両国首脳間の電話会談はなかった。米国のムードを読んで政府は強硬対応に旋回した。その後、F15K戦闘機の爆弾投下訓練や新型弾道ミサイルの発射実験の様子を公開するなど武力示威を行い、米国の戦略資産の展開も検討することを明らかにした。

日本は違った。北朝鮮のミサイル発射は4分後に全国瞬時警報システムを通じて速かに伝えられた。ミサイルが通過した12の地域で避難放送が実施され、新幹線の運行が一時停止した。安倍晋三首相は約30分後には記者団に「国民の生命と財産を守るために全力を尽くす」というメッセージを伝えた。トランプ米大統領との電話会談で、「日本と100%ともにある」という日本防衛の公約も確認した。

 

韓国政府は29日、3時間も迷った。北朝鮮の核・ミサイルは対話で解決できるという便宜的楽観で錯覚していたことが原因だろう。目の当たりにした現実は全く違う方向に向かっているが、政府は相変らず状況の悪化だけを心配している。北朝鮮の挑発の4時間後、文大統領は「なおさら南北関係の大転換を成さなければならない」と述べた。大統領府関係者も「今は小さな局面であり、もう少し大きな局面、さらに大きな局面、戦略的局面がある」と期待を持ち続けた。

むろん、北朝鮮の核問題は窮極的には対話で解決しなければならない。しかし、短距離ミサイルの挑発を戦略挑発ではないと縮小に汲々とし、いざ戦略挑発に対岸の火のように対応しては、国民の不信を大きくするだけだ。政府は、国民を安心させなくとも、最小限不安にさせることがあってはならない。そのように執着しては対話局面が展開しても韓国の居場所はないだろう。北朝鮮に言いなりになって米国に敬遠されることになりはしないのか心配だ。