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フードバンクと芸術家

Posted December. 12, 2018 07:54,   

Updated December. 12, 2018 07:54

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フードバンクと呼ばれるところがある。食品と生活用品の寄付を受けて、低所得層に支援する非営利団体だ。韓国語でない名前が物語るように、フードバンクは他の国で先にできて、韓国にまで広がった。最近、フードバンクを世界的に注目させた人がいる。歩きながら本を読む少女が話し手として登場する「ミルクマン」で、ブッカー賞を受賞したアンナ・バーンズ、彼女が書いた「感謝の言葉」のためだ。

北アイルランド紛争の傷を描いた小説の最後につけられた「感謝の言葉」は、読者の心を粛然とさせる。今まで読んだストーリーが、フードバンク、ホームリンクを含む多くの慈善団体と福祉政策の支援がなければ、書かれなかっただろうという事実を悟らせるからだ。バーンズはそれほど貧しい作家だった。さらに悪いことに、慢性的な腰痛と神経痛に悩まされた。だから借金をしなければならなかったし、フードバンクをはじめとする様々なところから助けを受けていた。

彼女は7000万ウォンの賞金で何をするのかという質問にこう言った。「まず、借金を返済して、その残りで生きていきます」。彼女の事例は、経済に従属されざるを得ない貧しい芸術家たちの現実を赤裸々に示している。普通の人なら、すでにあきらめたのだろう。社会もそれを当然のように考えただろう。貧しいうえ、健康でない人にいったい何が芸術だろう。銀の匙を口にくわえて生まれることまではないとしても、食べて生きることから自由でこそ可能なことが芸術ではないか。悲しいことだが、それが現実だ。低所得層から芸術家が出てくるのが難しい理由だ。

ところが、この世の中には、フードバンクに出向くほど貧しいが、芸術的才能を持つ人々が多い。貧困のために芸術の外に、時には人生の外に追い出されるだけだ。彼らには、バーンズの成功が少しは、わずか少しは慰めになるかもしれない。貧困を道徳的欠陥や失敗ぐらいに思う世界で成し遂げた貴重な成果だからなおさらだ。貧しい芸術家たちを社会が配慮しなければならない理由は、これだけで十分ではないだろうか。

文学評論家・全北大学教授