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金正恩氏の「核兵器の脅威のない平和」は米国の核の傘も狙っている

金正恩氏の「核兵器の脅威のない平和」は米国の核の傘も狙っている

Posted September. 20, 2018 08:30,   

Updated September. 20, 2018 08:30

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一言だった。「朝鮮半島を核兵器も核の脅威もない平和の地にするために積極的に努力することを約束した」。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の口から出た非核化発言だ。南北首脳の「平壌(ピョンヤン)共同宣言」には、その具体的な進展に向けた北朝鮮側の措置が含まれた。まず、東倉里(トンチャンリ)実験場とミサイル発射台を「関係国の専門家たちの参観」の下、永久に廃棄することを決めた。また、米国の相応の措置によって、寧辺(ヨンビョン)核施設の永久廃棄といった追加措置を取る用意があることを明らかにした。

正恩氏の非核化発言と共同宣言の合意は、停滞した米朝交渉の再開に向けて文在寅(ムン・ジェイン)大統領が説得に精魂を込めた結果と見ることができる。正恩氏が初めて非核化の意思を肉声で明らかにしたため意味もある。4月の南北板門店(パンムンジョム)宣言と6月の米朝共同声明に「完全な非核化」が明記されたが、これまで正恩氏が言及したことは一度もない。首領絶対体制では正恩氏の発言は何よりも優先されるため、明らかな対外意思表示と見ることができる。

しかし、正恩氏の発言は、同時に米国に対する要求のメッセージでもある。非核化は、北朝鮮が保有する核兵器も、米国の北朝鮮に対する核の脅威もない「朝鮮半島の非核化」でなければならないという意味だ。韓米合同軍事演習を「核戦争演習」と非難してきた北朝鮮だ。北朝鮮の非核化に相応して米国は軍事演習の中止だけでなく、韓国に対する核の傘や拡大抑止の公約も廃棄しなければならないという真意も含まれている。今後、韓米同盟の安保公約が弱まることがないよう留意しなければならない。

今回も北朝鮮はさらなる「爆破イベント」を提示し、米国に対話の再開の手招きをした。ひとまずミサイル実験場を専門家の参観の下で廃棄し、米国の相応の措置に合わせて寧辺核施設も廃棄できると明らかにした。第1段階は先制的、第2段階は条件付きだ。ただ第1段階も、すでに解体作業を始めたミサイル実験場の爆破に専門家を立ち合わせるという程度だ。第2段階の寧辺核施設の廃棄は、核凍結による「未来の核」の放棄に進む措置なので評価できる。しかし、あくまでも終戦宣言のような相応の措置がなされた時に可能ということなので、実現するかどうかは見守らなければならない。

北朝鮮は、米国が要求する核の申告、すなわち廃棄する核兵器と施設リストの提出については言及しなかった。凍結と検証、査察を経て完全な核廃棄に達する予定表も提示しなかった。むろん、両首脳が深い議論をしたので非公開の内容も少なくないだろうが、明示された合意内容だけでは満足な成果だと評価するのはまだ早い。

結局、正恩氏が、進展した非核化措置は今後の米国の相応措置にかかっているとボールを渡したので、米国がどのように受け入れるかが鍵だ。トランプ米大統領は平壌合意が出てすぐ、ツイッターを通じて、「正恩氏が専門家たちの前で核査察と(ミサイル)実験場・発射台の永久的廃棄をすることで合意した」とし、期待を示した。しかし、専門家の立ち合いが核査察を意味するわけではないためトランプ氏が過度に意味づけした可能性もあり、公開されなかったが、正恩氏が非核化過程で経なければならない査察の意思を明らかにした可能性もある。文大統領が25日にニューヨーク国連総会に出席し、トランプ氏と会うため、この席で米朝交渉に関するより明確な米国の立場が出てくるものと期待される。

さらに、正恩氏は近くソウルを訪問することを約束した。文大統領は「『近く』とは、特別な事情がなければ『今年中』という意味」と述べた。北朝鮮最高指導者のソウル答礼訪問が実現すれば、分断後初の大事件になるだろう。2000年にも、金正日(キム・ジョンイル)総書記の答礼訪問が6・15共同宣言に明記されたが、希望事項に終わった。南北首脳会談が3度も平壌で開かれたため、次はソウルで開かれることは当然の手順だ。

しかし、現在では期待に劣らず憂慮が大きいのが事実だ。ともすれば韓国国内の対立が激しくなり、賛否のデモが起こる可能性も高い。このような対立を和らげるには、北朝鮮の大胆な非核化措置が先行することはもとより、韓国政府の努力も切実だ。文大統領は19日、「これまで戦争の脅威と理念の対決が作った特権と腐敗、反人権から脱し、韓国社会を国民の国に復元できるようになった」と述べた。韓国社会の反北感情まで「積弊」と見るのか、首をかしげざるを得ない。

文大統領が「年内の答礼訪問」を強調したのには、韓国政府の「年内の終戦宣言」の目標とも無関係ではなさそうだ。南北と韓米首脳会談に続く米朝首脳会談を成功させ、そこに文大統領が合流することもできるが、正恩氏のソウル訪問にトランプ氏の合流を要請し、南北米3者による終戦宣言も可能という期待がうかがえる。むろん、米朝非核化交渉が再開し、北朝鮮が実質的な非核化過程に入った時に可能になることだろう。