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卵を茹でるお湯に塩を先に入れる行為にも科学が、分子生物学者が紐解く料理の奥義

卵を茹でるお湯に塩を先に入れる行為にも科学が、分子生物学者が紐解く料理の奥義

Posted March. 23, 2017 07:12,   

Updated March. 23, 2017 07:24

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卵を鍋で茹でるときは、先にお湯に塩を少し溶かすのが良い。この平凡なノウハウの理由を聞くと、大半は、「そうすれば茹でた時に割れないから」と答えるだろう。先週発刊された「私は台所で科学のすべてを学んだ」(ザ・スプ)の著者である全北(チョンブク)大学・分子生物学科の李康民(イ・カンミン)教授(61)は、そこからさらに一歩入って答える。

「ただのお湯で茹でると、卵の殻の内側と外側の液体の濃度差が大きくなる。浸透圧により、卵の中にお湯が染みこんで温度が上がると、体積が膨張して殻に亀裂が生じて割れるのだ。塩味がついて、白身がおいしくなるのは副次的利点だ」

2013年から講義してきた「分子料理学」の授業内容をまとめた本は、一見すると、最近の韓国社会の料理ブームに合わせて、科学に基づいたエピソードを付与してまとめた、よくある読み物に見える。ところが、入念に見ると、台所で今一度実践してみたいと思われる内容が、あちこちに詰まっている。

魚料理に生姜を添えれば良い理由、野菜を炒めるときはなるべく種類別に分けて調理しなければならない理由など、知っていながら面倒なので背を向けてきたノウハウの原理を探って、やってみたいという気持ちに駆り立てる。李教授が6年前に、妻と一緒に全羅北道全州(チョルラブクド・チョンジュ)にオープンした家庭食レストラン「ビルバオ」のキッチンで経験したことも盛り込まれている。

「肉に味付けをして寝かせる際、パイナップルやキウイを入れるのは、タンパク質分解酵素であるブロメラインとアクチニジンの働きで肉質が柔らかくなるからだ。ショウガの香りは、魚の臭みの成分であるアミンよりも脳で強く認知される。スパイスは、材料の香りをなくすのではなく、他の香りで脳の反応を調節しているのだ。料理を食べるのは、口ではなく脳だから」

料理という言葉の意味である「察して治める」を「科学に基づいた調理」として解釈する彼が、本格的にキッチンの調理台に関心を寄せたのは、26歳にフランス留学に旅立ち、そこで10年間食文化を体験してからだ。

「20歳の時に自炊を始めながら、料理がもたらす『創造の喜び』を少しずつ味わった。フランスに住んでみると、人生の最大の意味を調理して食べる行為に求める人たちが大半だった。生涯追求すべき幸せの糸口を、そこで悟ったことになる」

彼は自分のレストランのホールに、一つのテーブルだけを置いている。一日に3組のみ、予約を受けつける。突然予約人数が増えても、追加で食べ物を出すことができない。ちょうど必要な材料のみを予約当日の午後、市場に出向いて購入してすぐ料理をするからだ。当然、長期保管用冷凍庫などない。

「一度熱を加えた材料は、物理的、化学的に既に変形した状態になる。味を出す成分は、食べ物が冷めると同時に、永遠に抜けていく。ソースを大量に作って冷蔵庫に保管して使うのは、科学的に見れば、味の基本原理を無視する方法だ。もちろん、食事の時にこのようなことは言わない。味に正解などなく、食卓上の批評は幸せの邪魔になるから」



孫宅均 sohn@donga.com