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「葉巻がなければ天国も嫌いだ」 タバコの害悪は知っていたのだろうか

「葉巻がなければ天国も嫌いだ」 タバコの害悪は知っていたのだろうか

Posted June. 11, 2018 08:02,   

Updated June. 11, 2018 08:02

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ヒンズー人より1000年前に「0」の概念を考案したマヤ族は、祭礼時は必ずタバコを吸った。アステカ族にとって、タバコは神と人間とをつなぐ媒介だった。アルベルト・アインシュタインは、「タバコを口にくわえてこそ、人事について客観的な判断を下すことができる」と告白した。ジークムント・フロイトは、ハバナ葉巻を吸ってこそ仕事が捗り、感情を制御できた。マーク・トウェインは「天国に葉巻(cigar)がなければ行かない」と宣言するほどだった。

コロンブスが新大陸から欧州に持ち込んだタバコは、最初は薬剤として認識された。以後タバコが嗜好品として大きな人気を集めると、欧州の「土匙」たちは、タバコ耕作のために新大陸に渡った。米バージニア州で栽培され始めたタバコは、内陸へと耕作地が急速に拡大した。米独立戦争や南北戦争も、タバコをめぐる利権の争いが主な原因の一つだった。

戦場の指揮官たちは、タバコが食糧や銃弾に劣らぬほど重要であることを悟った。兵士たちを死の恐怖から抜け出せるのにタバコほどのものはなかった。第1次世界大戦を扱ったエーリヒ・レマルクの「西部戦線異常なし」には、「戦場でタバコが配給されるとき、それはほかならぬ攻撃時間が近づいたシグナルだった」という文章がある。チェ・ゲバラは「ゲリラ戦争」で、「ゲリラ戦士の生活の中で平凡ながらも極めて重要な慰めは喫煙だった」と書いた。

ウィンストン・チャーチルは、飛行機で移動するときに使う酸素マスクを変形して、タバコを吸える穴を作るほどのヘビースモーカーだった。地下バンカーの「戦争状況室(War Room)」と寝室には、タバコの吸殻だけを捨てる赤ゴミ箱があったし、大きな地図の横ひもにはライターが付いていた。地図を見て戦略を練りながら、タバコに速やかに火を付けなければならなかったからだ。勝利後、チャーチルは、指の間に葉巻を挟んで、勝利を意味するV字の印をした。

鄧小平やスターリン、金正日(キム・ジョンイル)もタバコ愛好家だった。毛沢東は1960年、ベトナムのホーチミンと和気あいあいに差し向ってタバコを吸いながら会談した。世界最大のタバコ生産国で消費国の中国は、男性の半分以上が喫煙する。今、中国の結婚式でタバコは、ゲストのための引き出物として愛用されている。米先住民にとって、キセルは平和と協力を象徴した。 17世紀に米国を横断したフランスの宣教師ジャック・カルティエは、先住民にタバコを渡すと、武器を手放すのを見て、タバコを「平和と戦争の神であり、生と死の仲裁者」と評した。米政界では「秘密裏の交渉」の結果物を「タバコの煙深い部屋(smoke-filled room)で下した決定」と表現する。

酒とタバコを敬遠する老練な交渉家であるトランプ大統領は、誰にも手強い相手だ。さらに、地球上で最も厳しい禁煙国家であるシンガポールで開催される米朝首脳会談は、愛煙家である金正恩(キム・ジョンウン)氏にはさらに負担になるかもしれない。サンスクリット語で「平和」を意味するセントーサ島で終戦を宣言され、韓半島に平和が定着することを祈う。


孫曉林 aryssong@donga.com