「南北が一緒に非武装地帯（ＤＭＺ）を生物圏保全地域に申請すれば、早ければ来年にも可能です」
昨年１２月、韓国人初のユネスコ執行理事会議長に当選した李炳鉉（イ・ビョンホン）ユネスコ駐在韓国大使は１４日、フランス・パリにあるユネスコ本部の議長室で行われた東亜（トンア）日報との単独インタビューで、２０１２年に韓国が推進して失敗に終わったＤＭＺ生物圏保全地域選定の再推進意思を明らかにした。
ユネスコ執行理事会議長は、ユネスコの象徴的な大統領の役割を担って議題選定と議事進行に影響を及ぼす。李大使は、駐ユネスコ韓国大使も兼ねている。
韓国は２０１２年、韓国区域のみを単独で生物圏保全地域として推進したが、当時「停戦協定違反」という北朝鮮の反対で失敗した。李大使は、「南北首脳が板門店会談を行ったことで、ＤＭＺが全世界の注目を集めただけに、南北が一緒に推進すれば十分可能である」と語った。彼は、「生物圏保全地域に指定されれば、ＤＭＺの観光誘致と乱開発を防ぐのに効果的であり、ＤＭＺを自然遺産と文化遺産に登録させる足掛かりになるかもしれない」と語った。氏は、ＤＭＺ南側の最北端民間村である韓国の臺姓洞（テソンドン）村とＤＭＺ北朝鮮側の最南端の機井洞（キジョンドン）村も、文化遺産登録の価値が十分あると付け加えた。
李大使は今月初め、ユネスコ内の世界遺産委員会（ＷＨＣ）の委員国大使８人と一緒に、ＤＭＺツアーを行った。委員たちは、「生態系保全がうまくできているので、今すぐ自然遺産に登録しても遜色がない」と絶賛したという。
李大使は、「教育文化科学などの非政治的分野を扱うユネスコは、特に北朝鮮と協力することが多く、キム・ヨンイル駐ユネスコ北朝鮮大使とかなり信頼ができている」とし、「さまざまな分野での協力を推進したい」と明らかにした。
氏は、「文化遺産の共同登録はいつでも推進できる」と語った。間もなく今年１１月、アフリカのモーリシャスで開催される無形遺産委員会では、韓国と北朝鮮がそれぞれシルム（韓国相撲）を議題に進めている。アリランとキムチの場合、韓国がアリランは２０１２年、キムチは２０１３年に無形文化遺産に登録し、２年後、北朝鮮も遺産に登録させた。
毎年末、ユネスコ本部では、アジア加盟国が自国の伝統料理を紹介する祭りが開かれる。李大使は、「北朝鮮はいつもキムチを用意して来るので、韓国は焼肉を用意していく」とし、「昨年末、当時のイリナ・ボコヴァ事務総長が韓国ブースに来てキムチを求めたので、北朝鮮のブースに案内したこともある」と語った。
今年３月、ユネスコ本部前では、日本軍元慰安婦のイ・ヨンスさんが、「昨年１０月にユネスコで保留決定が下された慰安婦記録物を世界記録遺産に登録しろ」と、１人でデモを行った。李大使は、「昨年、ユネスコ事務局が加盟国別に政治的対立が起きている文化遺産の案件８件を選んで、記録物の取り消しを推進したが、慰安婦記録物もその中に含まれていた」とし、「しかし、慰安婦記録物は政治的案件ではなく、戦時中の女性人権の普遍的価値の問題だと説得して、８つの議題の中では唯一、取消しではなく、保留判定が出た。まだ生きている議題だ」と語った。李大使は、「結果は予測できないが、新ユネスコ事務総長もこの問題を再議論する意志があることを知っている」と伝えた。キム・ヨンイル北朝鮮大使も非公式の席で、「韓国の慰安婦記録物登録を巡って助けることがあれば助けたい」という意思を伝えてきたと語った。
ユネスコは昨年、ドナルド・トランプ米大統領の離脱宣言と相次ぐイスラエルの離脱で、苦戦している。李大使は、執行理事会の議長に就任し、「ユネスコは国際政治紛争に過度に介入せず、まずできる非政治的業務に集中しよう」として、「脱政治」を主なアジェンダに掲げた。
その初の成果が、先月、ユネスコ執行委員会で採決せずに合意で可決させた中東決議案である。これまでは、執行委員会会議ごとに加盟国数の多いアラブ諸国がイスラエルを批判し、監視する決議案を提出して採決で採択し、イスラエルはその決議案を無視する行動が繰り返されてきた。
李大使は、「初めて今回の執行委員会で、敏感な内容を外してパレスチナとヨルダン、イスラエルと米国が事前調整を経て合意で決議案を採択した」とし、「依然対立は激しいが、イスラエルとアラブとのギャップを縮める試金石になるかもしれない」と伝えた。氏は、「最強国である米国がユネスコに残って指導者の役割を果たしてほしいという加盟諸国の願いが強く、イスラエルも、離脱意思を覆す可能性があるようだ」と期待した。
董正民 ditto@donga.com
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