「あの発言を聞けば、あれがまさに彼の本性を映し出すものだということは誰にとっても明らかだと思います」(クリントン氏)
「私の場合は言葉だけですが、彼(ビル・クリントン元大統領)の場合は行為が伴いました。彼の場合は、女性に対して行為に及んだのです。この国の政治史において、あれほど女性を虐待した人はいません」(トランプ氏)
クリントン氏は女性蔑視発言に関する質問だけで90分の討論時間のうち20分を使った。これに対してトランプ氏はクリントン氏の夫であるビル・クリントン元大統領の問題を取り上げ、クリントン氏が国務長官在職時代、個人のメールで機密資料を扱った「Eメールスキャンダル」で反撃した。「史上最も低俗な討論」という批判を受けたが、米国の有権者は両者の攻防で熱くなった討論を通じて大統領としての資質と力量を推し量ることができた。
一方、韓国の大統領選テレビ討論では、このような場面をなかなか見られない。候補が多いうえ、候補どうしの自由討論を制限する硬直した討論方式のためだ。それゆえ国内でも候補間の「デスマッチ討論」ができるようにテレビ討論方式の改善を求める声が多い。早期大統領選が確定し、候補を検証する期間が十分でないため、テレビ討論会を充実させて有権者が次期大統領のリーダーシップを検証する機会を与えなければならない。
国内で大統領選テレビ討論会が初めて導入されたのは1997年の第15代大統領選だった。テレビ討論は、金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領が当時先頭走者だった李会昌(イ・フェチャン)氏を退けて当選する踏み台になったという評価を受けた。
しかし次第に、支持率でリードしている候補がテレビ討論会を避ける傾向が現れている。第15代大統領選の時は公式討論会3回を含め計57回のテレビ討論会が開かれたが、第16代大統領選では27回、第17代大統領選では11回に減った。その代わり、主要な大統領候補はテレビのバラエティ番組や候補1人だけが番組に出演して宣伝手段に活用している。
討論方式も候補の力量と資質を検証するのに不十分という見方が多い。大統領選1ヵ月前から選挙日までに3回開かれる中央選挙放送討論委員会が主催する公式討論会は、基調演説、共通質問、相互討論の順に進行される。共通質問は司会者が質問して候補が一方的に自分の意見を言う方式だ。相互討論を通じて候補どうし質疑できるが、応答時間が1分30秒から3分程なので、適切な意見を聞くことができない。
討論に参加する候補が多すぎるという点も問題に挙げられる。現行公職者選挙法は、国会に5人以上の議員がいる政党の推薦候補者が参加できるように規定している。第17代大統領選のテレビ討論には6人の候補が参加し、討論時間の配分に困難を来した。
一方、米国は270人以上の選挙人団を構成したり、支持率が15%以上の候補だけがテレビ討論に参加できる。討論方式も90分間の2者討論をし、有力候補間の「デスマッチ討論」を誘導する。3回の公式討論会のうち1回は一般有権者が参加して候補に質問できる「タウンホール・ミーティング」方式で進めている。
明知(ミョンジ)大学人文教養学部のキム・ヒョンジュン教授は、「米国のように無差別討論がなされるよう討論会の方式を変えなければならない」とし、「討論の主題はガイドを与えても、候補どうし自由討論ができるようにし、一般国民の参加を拡大して力量と政策検証の場にしなければならない」と強調した。
문병기 weappon@donga.com · 황인찬기자 ムン・ビョンギ ファン・インチャン記者 hic@donga.com