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最悪の瞬間に会った「ラルフ・ローレン」の意味

最悪の瞬間に会った「ラルフ・ローレン」の意味

Posted April. 22, 2017 09:11,   

Updated April. 22, 2017 09:12

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「君の実力が悪いということではない。君はよくやった。ただここでは似合わないだけのことだ。」

米国での留学生活の途中、チョンスは大学院指導教授からお別れの宣言を聞くことになる。たんたんたる大路を歩んできた28年の人生の中で、最悪の瞬間を迎えた彼は、酒を飲みながら部屋中を破壊的にかき分ける。ハンマーで打ち下ろして引き出しを開けると、目についたのは結婚式の招待状一つ。

18歳の夏、突然訪ねてきて、「ラルフ・ローレンに送る手紙を翻訳してほしい」といっていたスヨンが送ってきた結婚式の招待状をきっかけに、昔の記憶をたどっていく。スヨンが彼に手紙を送ろうとしていた理由は、不合理なほど簡単だった。頭からつま先までをラルフ・ローレンのブランドでまといたいが、唯一「時計」だけはラルフ・ローレンで作らないので、それを促したいとのことだった。チョンスはその後、ラルフ・ローレンが時計を作らない理由を探し求めて出ていく。それに関する資料を絶えず探し読み、ラルフ・ローレンを息子のように育てたジョセフ・フランケルと隣人のおばあさん、入居看護師など、周辺の人物を探し回りながら話を聞く。

ラルフ・ローレンを追跡するほど、チョンスは平凡な人物たちの話に耳を傾けるようになる。いつのまにか時計のことは、もはや気にならない。偶然浮かんできた昔の記憶は、今のチョンスを変化させていく。10年前にスヨンとラルフ・ローレンに手紙を書いた時は何の意味もない慣用表現として見過ごした「ディア・ラルフ・ローレン」という最初の文の意味も、今になって初めてわかるような気がする。

小説の中で、ラルフ・ローレンは、多くの人たちが知っているように、米国の立地伝的デザイナーであり、11歳の時に夜逃げをしてニューヨークに渡り、靴を磨いて子供時代を過ごした立体的人物として描かれる。実在の人物であるラルフ・ローレンの物語を扱ったが、すべてがファクトではない。1939年生まれのラルフ・ローレンは、実際は生存しているが、小説ではすでにこの世を去ったことに描かれるなど、作家的想像力が加わった。

この本は2009年の登壇後、若い作家賞大賞や韓国日報文学賞などを受賞して注目を集めた作家の初の長編である。季刊文学「トンネ」に2015年夏から昨年春まで連載された。



張善熙 sun10@donga.com