「アラベラ」は、音楽ファンの間では幾分親しみのある名前だ。ドイツの作曲家リヒャルト・シュトラウスが文豪のフーゴ・フォン・ホフマンシュタールの戯曲に音楽を付けた喜歌劇の題名であり、その女主人公の名前だ。イヴァンカ・トランプさんと夫がこれを意識せずに子供の名前をつけてはいないようだ。シュトラウスを愛した指揮者のヘルベルト・フォン・カラヤンも、末娘の名前をアラベラから取って「アラベル」とつけた。
6歳のアラベラさんが大人たちの前で歌った「茉莉花」も、オペラファンがよく知るメロディだ。ジャコモ・プッチーニが最後のオペラであり遺作の「トゥーランドット」の第1幕で子供たちが歌う合唱から借用したメロディだからだ。
中国人が愛してやまない民謡だが、習主席がこの歌を聞いて気が休まったのかは疑問だ。茉莉花はジャスミンの花を意味する。アラブの民主化ブームをもたらした「ジャスミン革命」を中国では茉莉花革命と呼ぶ。2011年のアラブ革命の時、中国でもソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)に、「中国版茉莉花革命を成し遂げよう」という投稿が相次ぎ、中国当局が緊張したことがある。アラベラさんが歌った歌は、大人たちが「戦略的に」選んだのだろうか。
リヒャルト・シュトラウスのオペラに出てくる主人公と名前が同じ少女が、プッチーニのオペラに出てくるメロディを歌うことも斬新だ。プッチーニは19世紀末から20世紀初めのイタリアのオペラ界を代表する人物で、シュトラウスは同じ時代のドイツ・オーストリア圏のオペラ界を代表する主人公だった。2人は礼儀正しく対しながらも、非常に意識し合っていたと知人たちが後日伝えた。シュトラウスは冗談口調で、「プッチーニの音楽は聴かない。魅力的なメロディを無意識に真似てしまうかも知れないから」などと話したという。
유윤종 ユ・ユンジョン記者 gustav@donga.com