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米「トランプ帝国」の開幕、漂流する大韓民国号

米「トランプ帝国」の開幕、漂流する大韓民国号

Posted January. 20, 2017 08:34,   

Updated January. 20, 2017 08:37

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米不動産財閥出身のドナルド・トランプが20日(現地時間)、第45代米大統領に就任する。8年前、史上初の黒人大統領であるバラク・オバマが就任したときは、最悪の経済危機の中でも、米国は、そして世界は「変化と希望」への期待に満ちていた。でも今は違う。米経済が回復したにもかかわらず、二極化への懸念や反発、反移民感情、既存秩序に対する怒りや対立が煮えたぎっている。このような情緒に迎合して当選したポピュリスト大統領であるだけに、トランプは、経済では保護貿易主義、安保では「力の外交」を打ち出して、「米国を再び偉大にする」ためならどんなことでもするという「ストロングマン」の姿を見せている。

最大の荒波が予想される分野は、ほかならぬ米中関係だ。米国は、通商や安保分野で、中国が唯一の超大国である米国の覇権に挑戦することを決して容認しない構えだ。18日、ウィルバー・ロス次期商務長官は、国内人の雇用を奪い、貿易赤字を膨らませる中国に対して、「最も保護貿易主義の強い国」、「悪意的通商行為」などの表現を使いながら、通商戦争、為替戦争を予告した。トランプ大統領は当選者身分だった時、「一つの中国」の原則に疑問を示し、圧倒的軍事力や経済政策を通じて「米国優先主義」を実現するという意思を明らかにしたことがある。

米国と中国という海洋強大国と大陸強大国とがぶつかり合う韓半島は、トランプ時代にどんなことが起きるか予測すら難しい「超不確実性」を全身で経験する可能性が高い。米中の葛藤や対立は、安保は米国、経済は中国に大きく依存してきたこれまでの安米経中路線を危うくさせるだろう。中国の習近平国家主席は18日、スイス・ジュネーブの国連事務局での演説で、「核兵器を全面禁止し、最終的には(従来の核を)徹底的に廃棄し、核のない世界を実現しなければならない」と宣言した。中国の生ぬるい対北制裁履行について、「中国の空の公約はこれ以上容認できない」と批判してきたトランプ側に対して、習主席がオバマ前大統領の遺産である「核なき世界」を口にしながら反撃に乗り出した形と言える。

すでに北朝鮮は、米本土を脅かす大陸間弾道ミサイル(ICBM)試験発射をもって、トランプ政権の対応を探ろうとしている。北朝鮮がICBM推進体に見える物体を移動させる情況が捕らえられたのは、金正恩(キム・ジョンウン)が新年の辞で「大陸間弾道ロケットの試験発射準備事業が詰めの段階に至った」と予告したのが実行段階に入ったことを意味する。

トランプ政権の外交安保ラインは、北朝鮮への先制打撃論を筆頭に、対北朝鮮強硬派が主流をなしている。中国が「核のない世界」を主張する一方で、また、6者協議のような対話を持ち出す場合、北朝鮮の核問題を解決するための米中協力はもつれ、韓国は米中の間でどちらかの肩を持つのかはっきりするよう、選択を迫られるかもしれない。韓米同盟と韓中関係が共に試験台に上がって、韓国外交はにっちもさっちもいかないジレンマに陥る可能性も排除できない。一部では、米国と北朝鮮が、北朝鮮の核凍結などをめぐって交渉を模索するだろうという見方もなくはない。いずれの場合も、韓国が、国家安否のかかった議論の過程で排除されることがないよう、対米外交に全力を傾けなければならない。

北朝鮮の核とミサイルへの対処と並行して、トランプ政府は在韓米軍防衛費分担金の増額など、韓米同盟の見直しを要求する可能性もある。「韓米同盟強化」という明白な答えを超えて、我々も実利を手にしながら、トランプ政府との協力を固める現実的腹案を綿密にチェックしなければならない。

トランプ時代で安米経中は、もはや通用しないかもしれない。米国が「経済戦争」という強攻策で中国を為替操作国に指定すれば、対米黒字幅の大きい韓国も、為替操作国に指定される可能性がある。米中の通商摩擦で中国の対米輸出が打撃を受ければ、中国を通じた韓国の対米間接輸出もとばっちりを受けることになる。韓米自由貿易協定(FTA)によって自国雇用が食い込まれていると受け止めているトランプ大統領が、FTA再交渉を要求することもありうる。

政府は、韓国企業の米国内での雇用創出効果を総合的に分析し、米政府に対して、韓米FTAの効果を強調する必要がある。米国が韓国とのパートナーシップ関係を維持することが、米国を偉大にするトランプポリシーに合致するという確信を与えなければならない。

トランプ時代に各々生きる道を模索する国際社会の気流変化の中で、韓国が後れを取らないためには、早急に国のリーダーシップを安定させなければならない。トランプ大統領が韓国に電話しようとしても、電話に出られる指導者がいない状況が長く続いてはいけない。弾劾政局が続く間、黄教安(ファン・ギョアン)大統領権限代行を中心に、外交や安保、経済など国政全般を取り仕切って、トランプ時代に前向きに対処することが不可欠だ。文在寅(ムン・ジェイン)前共に民主党代表をはじめとする大統領選挙候補らもポピュリズム公約を乱発するよりは、ピンチに立たされている国の運命を直視し、先に国益について考えてほしい。トランプ大統領と習主席、ロシアのプーチン大統領など、韓半島周辺の「ストロングマン」たちは、大韓民国の大統領がまだ準備ができていないという理由で、地球村の世知辛い国益を巡る戦いの中で韓国の席を配慮して待っていてくれたりはしないだろう。