Go to contents

[社説]朴大統領の改憲提案、政略でなく民意を取り入れなければ

[社説]朴大統領の改憲提案、政略でなく民意を取り入れなければ

Posted October. 25, 2016 09:27,   

Updated October. 25, 2016 09:28

한국어

朴槿恵(パク・クンへ)大統領が24日、改憲議論のエンジンをかけた。朴大統領は国会予算案施政演説で、「任期内に憲法改正を果たすために政府内に憲法改正に向けた組織を設置し、改憲を準備する」とし、「任期内の改憲推進」を公式化した。朴大統領は、「1987年に改正され30年間施行された現行の5年単任大統領制憲法は、過去民主化時代には適合したが、今は体に合わない服になった」と改憲の必要性を強調した。朴大統領が大韓民国を新たに跳躍させる「2017年体制」を構想し、実現させる時だとし、「国会も早期に憲法改正特別委員会を構成し、国民世論をまとめて改憲の範囲と内容を議論することを望む」と要請したため、政界全体が改憲政局に突入することになった。

「改憲は全てを飲み込む国政のブラックホール」と議論に否定的だった大統領発改憲論なので、突然と感じられるのも事実だ。憲法・政治学者の中では、百年の大計を左右する国家アジェンダをこのような形で提起することに驚き、真意を疑う人も少なくない。金在原(キム・ジェウォン)大統領政務首席秘書官はわずか2週間前、与党セヌリ党の李貞鉉(イ・ジョンヒョン)代表や鄭鎮碩(チョン・ジンソク)院内代表の改憲論に「大統領府はいま改憲問題を提起する時ではないというのが確固たる方針」と主張した。金首席秘書官は24日、「当時私は施政演説文に含まれる改憲関連の原稿を作成していた」とし、「事前に公表できなかった」と理解を求めた。国政の指令塔である大統領府が大統領の発表時期を合わせるために「確固たる方針」とまで嘘をついてもいいものか。

大統領府の言葉が変わった2週間の間に、疑惑水準だった「崔順実(チェ・スンシル)事件」が実体のある「崔順実ゲート」に広がり、大統領の支持率が過去最低(25%)に下がった。「崔順実・禹柄宇(ウ・ビョンウ)」疑惑とレイムダックの隠れ蓑改憲というブラックホールを広げたのではないかという疑念を払拭できなければ、改憲論は動力を失うほかない。大統領の改憲推進を両手を挙げて歓迎した金武星(キム・ムソン)前セヌリ党代表も24日、「現在、国民的疑惑がある部分は明白にしなければならない」とし、「改憲で覆うことができる問題では絶対ない」と強調した。

 

朴大統領は、「現行の5年単任大統領制憲法は過去民主化時代には適合したが、今は体に合わない服になった」とし、「今や1987年体制を克服し、大韓民国を新たに跳躍させる2017年体制を構想し実現させる時だ」と力説した。丁世均(チョン・セギュン)国会議長は6月、第20代国会開院の言葉で、「来年にはいわゆる『87年体制』の産物である現行憲法が制定されて30年になる」とし、第20代国会が改憲を果たせる「憲政史の立役者」にならなければならないと力説した。1987年の民主化抗争で生まれた現行憲法は当時、長期政権を阻止し、「1盧3金」の政治的妥協の産物なので、その寿命が来たという国民的共感が形成されている。

5年単任制は、任期中に政治功績に汲々とした大統領の経験の未熟さとにわか作りの政策、政権交代をめざした野党の国政妨害、政権4年目になれば必然的に押し寄せるレイムダック(政権末の権力弛緩)で失敗した大統領を生んだ。87年以降5人の元大統領は、新大統領への溢れる歓呼の後ろで寂しく退任し、朴大統領にも失敗の影が垂れ込めている。朴大統領が「韓国政治は大統領選を行った翌日から再び次期大統領選が始まる政治体制によって、極端な政争と対決構図が日常的になってしまった。国民の生活よりも政権創出を目指して闘争する悪循環が繰り返されている」と発言したことは説得力がある。

「時期的に今が改憲の時」という大統領の判断も一理ある。歴代大統領は、任期後半になれば5年単任制の限界を感じて改憲論を提起した。その度に次期有力大統領候補が「権力延長の意図」だとブレーキをかけて失敗に終わった。有力な「未来権力」が可視圏内に現れていない昨今の状況が改憲に有利な政治的環境であることは事実だ。国会議員の中で192人が、「第20代国会改憲推進国会議員の会」会員であり、在籍議員3分の2以上の賛成を得なければならない改憲議決の定足数200人に迫る。

しかし、野党の有力候補である文在寅(ムン・ジェイン)前代表は24日、「朴槿恵(パク・クンへ)印改憲、政権延長のための第2の維新憲法でも作ろうということか?大統領は、『崔順実ゲート』疑惑の解消と経済・国民生活の活性化に専念してください」と反対を表明した。「共に民主党」内の親文(親文在寅)議員は約60人と推算される。野党「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)議員も、「改憲よりも国会議員選挙制度改革が先」と否定的な見解を明らかにした。国会内でも改憲のムードは熟したが、野党候補の反対を克服して改憲を推進するには、朴大統領と大統領府は改憲から一歩下がる必要がある。

朴大統領は24日、政府内「憲法改正に向けた組織」と国会の「憲法改正特別委」の「ツートラック」で改憲を推進する考えを明らかにした。金在原政務首席秘書官は24日、「改憲は大統領が主導しなければならない」という考えを明らかにした。盧武鉉(ノ・ムヒョン)、李明博(イ・ミョンバク)大統領が任期4年目に取り出した改憲論にブレーキをかけた人物が他でもない朴大統領だった。他人が改憲を推進すれば「権力延長の意図」であり、自分がすれば「大韓民国の50年、100年の未来を開く2017年体制」なのか。朴大統領は4月、報道機関編集・報道局長の会でも、改憲について「経済が蘇った時、国民の共感を一つにして実施するのがよくないか」と話した。果たしていま経済が蘇ったと共感する人は多くないだろう。

大統領が改憲論を触発したため、ひとまず国会にボールを渡すのが順理だ。国家の大計を左右する改憲は政界の専有物になってはならない。金武星前代表は24日、「汎国民改憲特別委」の構成を提案した。韓国憲法学会の張錫権(チャン・ソククォン)前会長も、「立法府や行政府などが主導的にするのでなく独立の『憲法改正特別委員会』を構成しなければならない」と提言した。改憲案が国会で通過しても国民投票を経ることになるため、改憲案を作る時から国民的合意の過程を経なければならない。

5年単任制の弊害に手をつける改憲の核心は、権力構造の改編だ。権力構造は、朴大統領が公約した「4年重任制」と国会議員が好む議院内閣制、大統領が外交と国防の責任を負い、首相が内政を総括する「分権型大統領制」など百家争鳴だ。次期候補が見えない親朴(親朴槿恵)勢力は、「潘基文(パン・ギムン)大統領に親朴首相」を骨子とする分権型大統領制を好む。ここに大統領と国会議員の任期を合わせるには、次期大統領の任期を短縮する難題まであり、果たして朴大統領の任期内の改憲が可能なのか懐疑的な見解が多いことも事実だ。

にもかかわらず韓国政治の状況は、改憲で形勢を完全に揺さぶらなければ「救済不能」だ。第18代の「動物国会」、第19代の「半身不随国会」を克服して第20代国会は開院後5ヵ月の間、4度も空転し、使えそうな法案ひとつもまともに通過させることができない「動・植物国会」に転落しそうだ。大統領の任期内の改憲を完遂できなくても、本格的な議論に突入する時だ。

「2017年体制」を開く新憲法は統一韓国と1980年代とは異なる基本権や福祉認識、情報化社会、地方分権などを含まなければならない。権力構造だけ「ワンポイント改憲」しようとしてはならない。改憲の渦の中で安全保障・経済危機管理が疎かになるなら、改憲はしない方がましだ。何より来年の大統領選を狙った政略的な改憲は成功しない。朴大統領が改憲を成功させた大統領になろうとするなら、何よりも私心があってはならない。それでこそ大韓民国の枠組みを変える「定礎改憲」が可能になる。



박제균논설위원 パク・ジェギュン論説委員 phark@donga.com