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[オピニオン]「才能の匙」

Posted August. 25, 2016 07:35,   

Updated August. 25, 2016 08:20

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成功とは才能の結果だろうか、それとも努力の実りだろうか。これを巡る学説はまちまちだ。2008年、マルコム・グラッドウェルのベストセラー「アウトライアー」では、「1万時間の法則」で世界的反響を引き起こした。生まれつきの才能より地道な練習が巨匠を作るという主張だ。2014年はこれを覆す学説が発表された。ミシガン大学の研究によると、1万時間の法則が当てはまるケースは、チェス分野が34%、音楽分野は29.9%に過ぎなかった。練習のほか、性格や年齢などが複合的に働いてこそ、優れた成功が可能だという。

◆「できる」という前向きなメッセージで、国民的スターとなったリオオリンピックフェンシングの金メダリスト「朴相泳(バク・サンヨン)」選手は、自分を「才能は土の匙だ」と表現した。「小さい時から運動は好きだったが、うまくはなかった。生まれつきの才能はせいぜい1〜2%ほどだ」と話した。それなら、生まれつきの体力を持っているだろうか。とんでもない。国家代表の基礎体力テストで、彼は下位圏に止まった。普通の人なら自ら放棄してもおかしくない才能や体力の限界の壁を、どのように乗り越えたのだろうか。

◆彼は14歳の時にフェンシングを始めた後、3年間1日に6時間の睡眠で、一年中ただの一日も休むことなく訓練した。超人的努力を続けることができたのは、フェンシングが好きで、楽しめたためだ。「之を知る者は之を好む者に如かず、之を好む者は之を楽しむ者にしかず」という孔子の言葉の通りといえる。適性や素質を探して打ち込むことの楽しさを見つけた朴選手が、同年代の人たちに聞かせる。「駄目だという基準は自分が作るものだ。今回だめなら次がある。また、その次がある。限界を設けないでほしい」

◆才能と努力は二者択一の問題ではない。努力だけで誰もが最高になれるものではなく、才能だけでトップに立てるわけでもない。これは学術研究でなくても、ある程度歳を取れば気づく世間の道理だ。だから、「匙論」に傾倒された若い世代に対して、朴選手のように努力すれば願いごとは全てかなうと、圧迫する気などない。ただ、これ一つだけは覚えていてほしい。真面目さも才能のもう一つの名であることを。

高美錫(コ・ミソク)論説委員 mskoh119@donga.com