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[オピニオン]トゥレ道と計画道路

Posted June. 20, 2016 07:00,   

Updated June. 20, 2016 07:43

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頭が複雑で途方に暮れている時は、ひとまず歩くという人たちが結構多い。歩けば、自分を取り囲んでいた出来事がおのずと遠のき、考えがまとまって、解決できそうもなかった複数の難題の解結策が、ふと浮かんてきたりもする。ジャン・ジャック・ルソーは、「私は歩くときだけ瞑想に浸る。歩きを止めれば、考えも止まる」とも語った。歩くことが創意的インスピレーションを覚醒させるという、スタンフォード大学の研究結果もある。走るのは獲物を取るための苦闘であり、危険から脱するための逃避なら、歩くのは、過ぎ去った道を振り返る省察ともいえる。

◆ウォーキングで、世界的名声を手にした道は、スペインのサンティアゴ(Santiago)巡礼路だ。サンティアゴは、イエスの12使徒のひとりであるヤコブを意味する。エルサレムで殉教したヤコブの遺体があると言われているスペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラに向かって、9世紀から巡礼がはやり始めた。12世紀に、ここがローマやエルサレムと共にキリスト教の3大聖地のひとつになった。最近、サンティアゴ巡礼者のうち、韓国人が10位圏に迫るほど目立って増えているという。

◆作家の徐永恩(ソ・ヨンウン)氏は、66歳だった2008年、サンティアゴに向かいながら遺言状を残した。過去と断絶せずに、黄色に矢印に沿って1200キロのカミーノ(巡礼路)を歩くことなどできないという断固とした決心だったかもしれない。シルクロード1万2000キロを一人で歩いたフランスのベルナール・オリヴィエも、出発前に子供に遺書を送った。孤独の中を歩きながら、真なる自我と向かい合う第2の誕生を迎えるためには、象徴的な死の儀式を経なければならないらしい。

◆政府が、韓半島南端の4面を取り巻く4500キロの「コリア・トゥレ道」を2018年まで作る計画だ。2012年に完成した済州(チェジュ)オレ道以降、全国各地で生まれたウォーキング旅行の総合版とも言える。政府は年間550万人の外国人がこの道を訪れ、7200億ウォンの経済効果を上げるだろうと期待している。しかし、沈黙や瞑想の中で内面に向かって歩く旅行者らの道は、期限を決めて建設する道路とは違う。一歩、一歩、その存在を求めようとする人たちの足跡が積もって、徐々に出来上がる。

異鎭(イ・ジン)論説委員 leej@donga.com