Go to contents

[オピニオン]若宮啓文の東京小考:夜の花見で論じたトランプと核武装

[オピニオン]若宮啓文の東京小考:夜の花見で論じたトランプと核武装

Posted April. 07, 2016 07:18,   

Updated April. 07, 2016 08:57

한국어
 春の一夜、桜の木の下で米中韓日の古い友人たちと花見をした。酒の勢いで議論百出。以下は私が記憶する「酒脳会議」の一端だ。

米:ああ、恥ずかしい。まさかと思ったトランプ氏が共和党で独走だよ。アメリカの品位がここまで落ちるとは。

日:8年前はオバマ大統領の出現で世界に夢を与えてくれたのに。

米:その反動さ。どうにもならないアメリカのいらだちの表れだろうね。誰も言えない本音を連発して受けている。

日:日本や韓国を守ってやる必要はない、だから核開発して自分で守れ、幸運を祈る、とも言っている。

韓:これには韓国の核武装論者たちも返す言葉がないよ。

日:あれもアメリカの本音なのかな。

米:そう思われたら迷惑千万。「トランプは外交も世界も分かってない」と、オバマさんもカンカンだ。

中:みんな核を持てとは、中国人も呆れるばかり。東アジアの核兵器は中国だけで十分なのに。

日:うーん、それも不愉快だけど、それなら中国は核保有国の責任を自覚してほしい。いまだに急激な軍拡で周囲を不安にさせているのは誰だい。

米:それに中国が北朝鮮に甘い顔をしてきたから、こんなことになった。彼らに核を放棄するよう、もっと締め付けてくれないと。

中:いや、習近平主席も北朝鮮の若者に顔をつぶされて怒り心頭だよ。今度は国連で厳しい制裁に賛成したでしょ。

韓:それは朴槿恵大統領が開城工団を閉鎖して、背水の陣を敷いたからだ。

中:いざとなると、女性はすごい。

韓:韓半島信頼プロセスが破たんしたってことだけど、朴さんは「これは始まりにすぎない」と勇ましい。

日:それでも、決め手に乏しいね。ワシントンでの首脳会談でも、あまり知恵は出なかった。

米:それはそうと、日韓の首脳は慰安婦問題の合意以来、すっかり仲よくなったね。オバマさんも喜んでいる。

日:北朝鮮のおかげもあるな。

米:ところが、ワシントンで日中の首脳会談だけはなかった。

中:まだ日中の溝は深いんだよ。最近も王毅外相が日本を「双面人」と呼んだほどだ。

韓:顔が2つとは、安倍晋三首相のこれまでの言動からは言い得て妙だね。

日:うーん、それはそうかもしれないが、外相が口にしてよい言葉じゃない。それに平和、平和と口にしながら軍拡に熱心な中国こそ、立派な双面人だぞ。

米:その通り。

日:話を戻せば、いまや北朝鮮は「朝鮮核ミサイル主義共和国」。あの国の核保有の信念は揺るぎそうもない。

韓:共和国というより王国だけど、王朝の維持には人民の生活も無視できない。どこまで踏ん張れるか、やっぱり中国がカギを握るよ。

日:だけど、北朝鮮への制裁にも民生支援に抜け道があるし、中国がどこまでやってくれるかねえ。

中:確かにそこが悩みのタネなんだ。北朝鮮を追い詰めすぎて暴発したら大変だからね。それに、北朝鮮と商売している中国人の生活も無視はできない。

韓:やっぱり頼りないなあ。

中:北朝鮮は平和協定を求めているのだから、アメリカも北朝鮮と話し合ってくれないと。

米:でも、向うは核を絶対に放棄しないというから交渉はできないんだ。それにいまは中東が大変で、そこまで手が回らない。だから、戦略的忍耐だよ。

日:無為無策的忍耐のような気もするけどね。

中:ぐずぐずしていると、北の核がアメリカまで届く日がすぐにくるよ。

米:そんな脅しには乗らないよ。いざとなったら斬首作戦の実行だ。

韓:どちらも下りないポーカーゲームみたいで怖いな。

日:そうか、だからやっぱりトランプの出番っていうわけか。

一同:まさか!

(若宮啓文 日本国際交流センター・シニアフェロー 前朝日新聞主筆)