サロー氏は、早くから富の不平等問題を指摘した様々な著書で注目された。特に、1980年に発表した『ゼロ・サム社会』で米国を利益と損害の合計がゼロになる社会と規定し、富の勝者独占構造による経済不平等を正すために租税改革を主張した。しかし、『知識資本主義』(2003年)では、世界化が開発途上国の人々の実質的な生活を向上させた面もあるとし、世界化を一方的に罵倒することは警戒しなければならないと指摘した。『資本主義の未来』(1997年)と『富のピラミッド』(1999年)なども世界的に広く読まれた力作だ。
1938年、米モンタナ州リビングストンで生まれたサロー氏は、ウィリアムズカレッジで政治経済学を学んだ後、ローズ奨学生に選抜され、オックスフォード大学で哲学と政治学、経済学で修士学位を、1964年にハーバード大学で経済学の博士学位を取得した。その後、ハーバード大学でしばらく教鞭を取ったが、1968年にMITに移り、ここで半生以上学生を指導した。1987年から1993年までMITスローン経営大学院の学長を務めた。
サロー氏は、著書と講演で大衆に経済を伝えることに努めたが、サロー氏の本当の希望は現実政治だったと、米紙ニューヨーク・タイムズは伝えた。同紙は、「サロー氏はカーター政府(1977~1981年)で経済諮問を務めたが、本当に望んだのは経済官僚になることだった。しかし招請を受けることはなかった」と伝えた。サロー氏は1997年にあるインタビューで、「王(大統領)の耳を得ることができないなら、大衆に訴えなければならないと決心した。それが経済政策に影響を及ぼせる別の方法だからだ」と語った。
황인찬기자 ファン・インチャン記者 hic@donga.com