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100万人の高齢者が訪れたシルバー映画館「ハリウッド・クラシック」

100万人の高齢者が訪れたシルバー映画館「ハリウッド・クラシック」

Posted February. 12, 2016 07:27,   

Updated February. 12, 2016 07:55

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先月27日、ソウル鍾路区三一大路(チョンロク・サムイルデロ)にある楽園(ナクウォン)商店街4階の映画館。スクリーンでは一組の男女が切ない表情で会話をしていた。上映館を埋め尽くした観客たちは、二人の主人公の台詞とジェスチャーに全神経を集中していた。普通の映画館でよく見られるような光景だが、よく見てみると観客の多くは白髪で、上映中の作品はビデオテープの入手すら難しい1972年公開作の「リー・チンの女教師」だった。

シルバー映画館「ハリウッド・クラシック」がオープンして、今年で満7年となった。社会的企業「思い出を売る劇場」のキム・ウンジュ代表(42)が2009年、旧ハリウッド劇場を高齢者専用映画館にリフォームした。客席300席に過ぎないミニシアターだが、昨年の累積観客数は100万人を突破した。口コミで広がり、最近は一日800人以上が入場している。シネマコンプレックス(複合映画館)並みの人気だ。

シルバー映画館の存在理由は、「お年寄りの楽しむ権利」にあると言える。映画は韓国人が最も好む余暇生活の一つだが、高齢層の映画館利用は容易ではなかった。インターネットでチケットを購入しておかなければ良い席を取るのが難しく、上映中の映画ももっぱら若者向けになっている。一般の映画館とハリウッド・クラシックの最大の違いは、上映作品と価格だ。開館作品の「ベン・ハー」(1959年)をはじめ、「黒騎士」(1952年)、「太陽がいっぱい」(1960年)、「愛しのスザンナ」(1976年)など、一世を風靡した「あの時、あの時代」の名画が上映される。55歳以上の高齢者と同伴者のチケット価格はそれぞれ2000ウォン。一般シネマコンプレックスのチケット料金の20%に過ぎない価格だ。

映画館の到るところで、高齢者への配慮が伺える。字幕のサイズは一般映画館の1.5倍だ。トイレを我慢できないお年寄りが暗い映画館で安全に移動できるよう案内するスタッフもいる。インターネット販売なしに、当日午前から現場でチケットを販売しているのも特徴といえる。キム代表は、映画上映前に直接作品の説明とエチケット、非常口の案内を行なっている。安全な帰宅のために、午後8時には上映を終了する。

初期の運営は容易ではなかった。年間3億ウォンに上るフィルムの著作権料を支払うのも精一杯だった。ソウル市とSKケミカルが毎年約1億ウォンを支援し、採算は少しずつ改善した。しかし、さらに大きい力になっているのは、観客の声援だ。キム代表は「雨の日、傘なしに鍾路に出かけても問題ない」と話した。街を通るお年寄りのうち1人は傘をさしてくれるほど、観客と親しくなったということだ。経営が厳しかった時代、ある観客はキム代表を呼んで「経営状況が良るなるまで返さなくていい」と言って、3000万ウォンを渡した。昔の珍しい映画フィルムを入手する時は、映画界出身の方々に協力してもらうこともあった。

近くのタプコル公園の「懐の寒い」お年寄りだけがここを訪れるわけではない。元長官や将軍、大手企業役員出身の常連客も多い。ある資産家は「家内と『サウンド・オブ・ミュージック』を映画館で見られる日がまた来るとは、夢にも思わなかった」という手紙を送ってきた。キム代表は「私のところに届いた手紙は5000通を超えている」と述べた。



황태호기자 ファン・テホ記者 taeho@donga.com