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芸術的感性が豊かな全蛍弼

Posted January. 18, 2019 10:04,   

Updated January. 18, 2019 10:04

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日本による植民地支配期に10大富豪だった澗松(カンソン)・全蛍弼(チョン・ヒョンピル)は、全財産を投じて民族文化財の収集と保護に取り組んだ。彼の収集品中には、訓民正音解例本、青磁象嵌雲鶴文梅瓶、白磁青画鉄彩銅彩草蟲蘭菊文甁、蕙園傳神帖など国宝と宝物が並ぶ。国を奪われる不幸な時期なので収集が可能だったが、それゆえさらに価値がある。彼が建てた葆華閣(現在の澗松美術館)は、国内初の私立美術館だ。

澗松の文字は、裕福な家庭の息子だけあって余裕と度胸、意志の強さと実直さが絶妙な調和をなしている。芸術的感性が豊かな人物だったと推測できる。全体的に大きく、正方形の形の文字は度量が大きく大らかだが、模範的で正直であることをうかがわせる。また「ㅎ」の点が大きく、トップになろうとする意志が強いことがわかる。角張っていたり、最後の筆画の払いが力強いのは、実直で意志の強さを示す。非常に長い横線は忍耐心が特に強いことを意味する。全体的に筆画が丸く、字の構成の間隔が広いのは、余裕と寛容を意味し、裕福な家庭の息子らしい。隙がなく、意志が固く、成功指向的である財閥一世の字体とは大いに異なる。

大きさと傾きには変化がかなりあり、時には罫線の外にはみ出す不規則性があらわれる。ここに筆画のやわらかさを加味すると、澗松は芸術的感性がかなり豊かだったと見える。このような筆体は、収集家よりは芸術家にしばしば見られる。このような芸術的感性と最高を指向する澗松の趣向が水準の高いコレクションを可能にしたのだろう。澗松は鑑識眼も高かったとされるが、おそらく真偽を区別する能力は不十分だっただろう。筆体は、論理と緻密さが要求される鑑識家とは程遠い。収集の過程で、気難しく隙のない呉世昌(オ・セチャン)のような人の鑑識眼に依存するほかなかっただろう。



申武炅 fighter@donga.com